2021.8.8 雨季には空から凶暴なアマ蛙が降ってくる 【いかしたバンドのいる街で】
いかしたバンドのいる街で / スティーヴン・キング
評価:3
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■ヒトコト感想
スティーヴン・キングの短編集。ゾンビ的なものや不思議な恐怖を描いた作品。「動く指」は、洗面台の排水溝から指が出てくる作品だ。手ではなく一本の指というのが強烈だ。幻覚なのか妄想なのか。指をどのようにして排除しようとするかがポイントだ。自分の頭の中では、家の中で指が一本排水溝からでてくるシーンを想像してしまった。塩素が含まれた強烈な排水溝を掃除する洗剤などを流し込んで指を退治しようとする。指を切ることを想像したりもする。
得体の知れない恐怖が、日常の一場面に現れてくるとより恐ろしくなる。そのほかにもホテルのメイドがお腹の中の子供の父親が誰だかわからない話や、空からヒキガエルが降ってくる話など、普通ではない短編ばかりだ。
■ストーリー
自動車旅行中、小さな、美しい街に迷い込んだ一組の夫婦。だが、「ロックンロール・ヘヴン」という名のついたその街はどこかおかしい。なぜ、住民が皆、見たことのあるような人たちばかりなのか…?ロック&ホラーの傑作として名高い表題作をはじめとする全6篇を収録。鮮烈な描写、後を引く余韻。キング節が冴え渡る。
■感想
「スニーカー」は誰もが経験した一場面での恐怖を描いている。男子トイレのボックスの中でスニーカーが見える。次の日も同じスニーカーが見える。毎日決まった時間に同じスニーカーを同じボックスの中で見る。そして、スニーカーの上に死んだハエが落ちている。
毎日の習慣として決まった時間にトイレに行く人はいるかもしれない。毎日同じボックスに同じ人がいるパターンはありえるので、たいして気にならないのだろうが…。スニーカーの周りにハエの死骸が山積みになるのは恐ろしい。そして、その場面を想像すると気持ち悪くなる。
表題作である「いかしたバンドのいる街で」は、あてのない旅をしていたカップルが、途中で道に迷ってしまい人里離れた田舎街にやってくる。どこか落ち着かない雰囲気を漂わせている街。地図にもでていない街だが、かなり規模が大きい。この段階で、普通の街ではないのは確かだ。
街の人々を見ると、どこかで見たことのある顔がちらほらある。そして、街のレストランに入ると、そこには聞き覚えのあるウェイトレスの声が聞こえるのだが…。彼女は死んだはずだった。想像できる流れではあるが恐ろしい。
「雨期きたる」は、ふと訪れた田舎で、雨期がくるから帰れと言われてしまう。そんなことを気にしない夫婦は雨期を楽しもうと考えていたのだが…。夜中に降ってきたのは、雨ではなくヒキガエルだった。そのヒキガエルも普通ではない。狂暴な牙をもち人間に噛みついてくる。
足に噛みついてきたヒキガエルを引きはがすために思いっきり足を壁に蹴りつける。その拍子で足の指の骨が折れてもおかまいなし。ヒキガエルの恐怖はすさまじい。狂暴なヒキガエルが空から降ってくるのは恐ろしすぎる。
多種多様な恐怖を集めた短編集だ。
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