2018.5.13 立てこもり事件の複雑な構成 【ホワイトラビット】
ホワイトラビット [ 伊坂 幸太郎 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
住宅街で発生した人質立てこもり事件。犯人や刑事、空き巣や誘拐犯など、様々な視点で物語が語られている。立てこもり事件に対する客観的な視点を交えることで、読者をミスリードしている。また、時系列が不ぞろいなことも、ミステリーとしての仕掛けが生きている。なぜ立てこもり事件を起こしたのか。なぜその家とは無関係の男が父親のふりをして立てこもり犯に囚われているのか。
いかにもな伊坂幸太郎ワールドのキャラたちが活躍する。必ず置手紙を置いて逃げる空き巣など、まさに伊坂キャラ全開だ。ビジネスとして誘拐を行う稲葉という悪人の存在すらも、物語を盛り上げるスパイスとしている。巧みな構成で後半に怒涛のネタバレをしている。
■ストーリー
仙台の住宅街で発生した人質立てこもり事件。SITが出動するも、逃亡不可能な状況下、予想外の要求が炸裂する。息子への、妻への、娘への、オリオン座への(?)愛が交錯し、事態は思わぬ方向に転がっていく―。
■感想
立てこもり犯の目的はオリオという男を探し出すこと。まずこの流れが不自然だ。警察に男を探させるために人質をとり、立てこもり事件を起こす。なぜこの思考に行きつくのかは、後半で判明する。そのため、前半では不自然すぎる状況が淡々と語られている。
その他には、のちの結末のために様々な伏線が張られている。几帳面な空き巣である黒澤目線では、空き巣に入った家に置手紙を置くのを間違えたからと取りに戻ったりもする。このあたり、伊坂ワールドでなければ、不自然すぎて通じない内容だ。
立てこもり犯の兎田は、嫁を人質にとられたからと無茶なことをする。そもそもが誘拐ビジネスで儲けようとする組織の中で、あいつは責任感があるからと嫁を人質にとり仕事をやらすというのも違和感がありすぎる。
冒頭からオリオン座の話が登場したり、オリオン座のウンチクを語るオリオさんであったり、いつもの現実離れしたキャラクターたちが登場してくる。さらには、立てこもり事件を解決するために投入されたSITの隊長もまた、特殊なキャラクターとなっており、すべてが伊坂ワールドのキャラに包まれている。
前半から中盤にかけてはしつこいほど伏線の連発となっている。そして、それらがすべて回収される後半は非常に読んでいて気分がよくなる。時系列的に整理すると、あの不自然な行動や言動の意味がはっきりしてくる。この構成が良いのだろう。
最初から順に描かれていたとしたら、これほど爽快感は得られていないだろう。黒澤が立てこもり犯に人質に捕られた家族の父親のふりをする。そして、本当の父親もまた、物語としては重要な要素となっている。
伊坂幸太郎作品が好きな人にはたまらない流れだろう。
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