ヒトラー暗殺、13分の誤算


 2018.10.28      ひとりでヒトラーを暗殺しようとした男 【ヒトラー暗殺、13分の誤算】

                     
ヒトラー暗殺、13分の誤算 /クリスティアン・フリーデル 
評価:2.5

■ヒトコト感想
ヒトラー暗殺を計画した男・ゲオルクを描いた作品。冒頭からヒトラー暗殺に失敗したゲオルクが囚われ、拷問にかけられる場面から始まる。ヒトラーがいつもよりも13分早く退席したことによる誤算。綿密な計画と精巧な爆弾のため、ゲオルクひとりでやったとは思わず、秘密警察はゲオルクの仲間を見つけ出そうとする。

本当にゲオルクはひとりでヒトラーを暗殺しようとしたのか。犯行日までのゲオルクが描かれている。ただの家具職人でしかないゲオルクが精工な爆弾を作ることができたのか。ゲオルクの人生をさかのぼる形で、ゲオルクの思想や信念などがしっかりと語られている。ヒトラーが徹底的な尋問を命じたとしても、ゲオルクが変わることはない。

■ストーリー
1939年11月8日、恒例のミュンヘン一揆記念演説を行っていたヒトラーは、いつもより早く切り上げた。その後、仕掛けられていた時限爆弾が爆発――ヒトラーが退席して13分後のことだった。その爆弾は精密かつ確実、計画は緻密かつ大胆、独秘密警察ゲシュタポは英国諜報部の関与さえ疑った。

しかし、逮捕されたのは36歳の平凡な家具職人、ゲオルク・エルザー。彼はスパイどころか、所属政党もなく、たった一人で実行したと主張。信じ難い供述の数々―。それを知ったヒトラーは徹底的な尋問を命じ、犯行日までの彼の人生が徐々に紐解かれていく。

■感想
独裁政権をしいていたヒトラーを暗殺しようと考えた男がいた。精工な時限爆弾と綿密な計画。到底ただの家具職人であるゲオルクひとりが実行できることではない。激しい拷問をゲオルクに実行したとしても、ゲオルクひとりで実行したことに変わりがないために、新たな証言がとれるわけでもない。

ゲオルクに対する拷問の数々はすさまじい。そして、ゲオルクの信念のある発言の数々には強烈なインパクトがある。家具職人として雇い主の奥さんと浮気したりもしたゲオルクの生活がメインに語られている。

秘密警察はイギリスの介入すら考えるほど、ゲオルクの計画は国家規模の精密さであるということだろう。どれだけ拷問したとしてもゲオルクがまったく口を割らない。家具職人でありながら、民衆が搾取されている現実や、戦争に勝てる見込みがないことまで見通している。

そしてナチスに対して徹底的に反抗しようとする。ここまで強烈な信念をもつ男もすごい。ゲオルクのひたすら強烈な信念は、不倫相手の旦那に対してもゆるむことはない。どれだけ四面楚歌でも前にすすむすさまじい男だ。

家具職人が火薬の量を計算し、ヒトラーを暗殺するための時限爆弾を作る。その際に普通ならば自分に足りないものを他の人たちの助けを得ることで実現するはずだが、ゲオルクはあくまでもひとりですべてを実行しようとする。

当然ながら秘密警察はゲオルクがひとりで爆弾を作成できるとは思わない。そのため、誰か他に協力者がいないかと厳しく問い詰める。ゲオルクが科学者を前にして、いかにして自分がこの爆弾を作ったかの説明をする場面は強烈だ。

本作がすべて実話ということに、驚かずにはいられない。



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