2018.11.4 地雷を除去しつづける少年たち 【ヒトラーの忘れもの】
ヒトラーの忘れもの [ ローラン・ムラ ]
評価:3.5
■ヒトコト感想
戦後のデンマークを舞台に描かれた本作。ドイツ軍の占領から解放されたが、ドイツ軍が大量に埋め込んだ地雷の除去作業を衝撃的なタッチで描いている。地雷の除去作業は危険だ。一歩間違えれば地雷は爆破してしまう。そんな危険な作業をするのは、捕虜となったドイツの少年兵たちだ。およそ人間らしい生活ができない状態で、来る日も来る日も地雷を除去し続ける。
海岸線の地雷が全て除去できたあかつきには故郷に帰れるという、ただそれだけを希望に。少年兵たちの従順な態度と表情は心打たれる。そしてミスして爆死する者もいれば、精神がおかしくなり地雷原につっこむ者もいる。少年兵たちを指揮する軍曹が、しだいに少年兵たちに情がうつるシーンだけが唯一の救いだ。
■ストーリー
1945年、ナチス・ドイツによる占領から解放されたデンマーク。ドイツ軍が海岸線に埋めた無数の地雷を除去するため、捕虜のドイツ兵たちが駆り出された。彼らは地雷を扱った経験がほとんどない。彼らを監督するデンマーク軍のラスムスン軍曹は、全員があどけない少年であることに驚くが、容赦ない暴力と罵声を浴びせる。
少年たちは祖国に帰る日を夢見て苛酷な任務に取り組むが、飢えや体調不良に苦しみ、地雷の暴発によってひとりまたひとりと命を落としていく。そんな様子を見て、ナチを激しく憎んでいたラスムスンも、彼らにその罪を償わせることに疑問を抱くようになる。
やがてラスムスンは、残された任務をやり遂げて帰郷を願う少年たちの切なる思いを叶えてやろうと胸に誓うようになる。しかしその先には思いがけない新たな苦難が待ち受けていた…
■感想
デンマークの軍や市民の根底にあるのは、ナチスドイツに散々いやな目にあわされてきた報復の意味が強いのだろう。地雷除去作業を命じられた少年兵たちに罪はないが、同じドイツ人ということですべての憎しみを背負わされる形となる。
軍曹は少年たちを徹底的な暴力と罵声で従えさせようとする。満足な食事も与えず過酷な状況に放り込んでいる。少年兵たちはただ従うしかない。過酷な地雷除去作業中には、誤爆により大けがを負う者もいる。まさに死が前提の作業となっている。
物語がすすむにつれ、軍曹の考え方が少しづつ変わっていく。少年たちに情がうつり作業が無事に終わることを願うようになる。そして、食事を与え休日を与えてリフレッシュさせたりもする。ただ、その状況はデンマーク軍の上層部の考えとは異なっている。
少年兵たちの純粋な表情と、過酷な作業により疲弊していく精神。たとえリフレッシュの機会が与えられたとしても、死と隣り合わせの作業に変わりはない。軍曹が溺愛する飼い犬が地雷の除去漏れにより爆死する。そこから、事態は変化していく。
物語のトーンとしては、軍曹は最終的には少年兵たちの思いに答えようとする。14人いた少年たちが最終的には4人になる。無事作業を終えたため、故郷に帰れるはずなのだが…。本作が実話をベースにしていることに驚いた。
腹ばいになりながら匍匐前進して砂浜に棒を指して地雷があるかを確認する。そんな原始的な方法と手作業での地雷除去。今ならば別の手段は考えられただろうし、捕虜にリスクのある作業をやらせることは、問題だらけだろう。
少年たちの純粋な視線がしだいに濁っていくようで、見ていて辛くなる。
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