光にふれる


 2019.4.27      全盲のピアニストの日々【光にふれる】

                     
光にふれる
評価:3

■ヒトコト感想
まるで辻井伸行を彷彿とさせる、全盲のピアニストを描いた作品だ。目が不自由なユィシアンは音楽学校に通う。目が不自由なゆえに直面する問題。ピアノの才能はあるが、不安な毎日から逃れられる兆しがない。新しい生活に対する不安。母親は心配でユィシアンに付きっきりとなるが、ユィシアンは誰の助けも借りずにひとりで生活できるようになりたいと思う。

ドタバタな毎日を過ごす中で、ダンサー志望の女性と出会う。ユィシアンの風貌がまさに辻井に似ていることと、純真無垢な雰囲気が良い。ただ、ステレオタイプな全盲のピアニストという感じだ。悪意が一切ない物語だ。ユィシアンが女性と恋人同士になれたかどうかはわからないが、幸せな気持ちになれることは間違いない。

■ストーリー
生まれつき目が不自由なユィシアンは、類まれなピアノの才能を持ちながらも、幼いころにコンクールで起きたある事件がトラウマとなり、表舞台に立つことができなくなっていた。ピアニストを夢見るも、叶える術を知らないユィシアン。そんな彼をいつも近くで見守ってきた母は、心配な気持ちを抑え、彼が将来音楽を仕事にして自立できるようにと、台北の音楽大学に通わせることにする。

家族と離れた都会での暮らしや、健常者であるクラスメイトとの間にはだかる壁は、彼に大きな戸惑いを感じさせ、不安な毎日が過ぎていく。ところがそんな彼の生活は、ダンサーを夢見る少女、彼の音楽と人柄に惹かれて集まった仲間との出会いによって、光に満ちた世界へと変わってゆく。

■感想
生まれつき全盲なユィシアンが音楽学校でピアノの才能を開花させる。目が見えないことは大きなハンデではあるが、審査員がその障害を考慮してコンテストなどで優遇されたと勘繰られるかもしれない。本当に実力があり評価されるのか、それとも…。

ユィシアンの実力は間違いないのだが、他者がどう考えるかはそれぞれだろう。ユィシアンはピアノの問題よりも新しい生活や、自立することについての問題が描かれている。ルームメイトはチャラいが良い奴でユィシアンは周りに恵まれている。

ダンサーを夢見る女性は、母親の金遣いの荒さに困惑しながら夢に向かって突き進んでいる。恋に破れ自暴自棄になっているときに純粋なユィシアンと出会う。健常者と全盲者の付き合いというのは、どこか難しさがあるはずなのだが、そのあたりは描かれていない。

本当に純粋でプラトニックな関係のような気がした。ここから、もしユィシアンが一歩進んだ関係を求めたとしたら、女はどう反応しただろうか。そのあたり、ある意味タブーなのかもしれない。

ユィシアンにとっての光に満ちた世界とはどのようなものか。健常者と同じように生活することは難しい。ピアノの才能があるからこそ、恵まれた生活ができる可能性がある。全盲ということをどうとらえるのか。単純な意味での健常者と同じように扱うのは難しい。

ユィシアンが捻くれた考え方をもつのではなく、思いを純粋に表現できる青年でよかった。今まで差別されてきた経験や母親の世話にならないと生活できないことについて、変に自虐的になっていないのがよい。

風貌も辻井伸行に似ている。



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