日々是好日


 2020.10.31      平凡な女性がお茶を通して変わっていく【日々是好日】

                     
日日是好日
評価:2.5

■ヒトコト感想
ごく普通のまじめな女子大生典子が主人公の本作。簡単に言うとお茶を習うことで典子の心境に変化が起こっていく物語だ。まず驚きなのはお茶の作法の緻密さだ。畳を歩く際には5歩で次の畳に到達するようにゆっくりと歩く。ひとつひとつの所作についても厳しい取り決めがある。12年に一度しか使わない干支が描かれた茶碗で正月にお茶をたてる。

厳しい世界の中にも器用な者がおり、典子は不器用ながらもお茶を通して人生の機微を感じていく。序盤では典子はお茶に通うことをめんどくさくなっている。従妹と共に習ってはいるが、器用にできない自分にいら立っているようだ。そこから月日が経ち、お茶を続けベテランとなる典子。最終的には典子はごく普通の人生をすごしている。

■ストーリー
真面目で、理屈っぽくて、おっちょこちょい。そんな典子(黒木華)は、いとこの美智子(多部未華子)とともに「タダモノじゃない」と噂の武田先生(樹木希林)のもとで“お茶"を習う事になった。細い路地の先にある瓦屋根の一軒家。武田先生は挨拶も程々に稽古をはじめるが、意味も理由もわからない所作にただ戸惑うふたり。「お茶はまず『形』から。先に『形』を作っておいて、後から『心』が入るものなの。」と武田先生は言うが――。青春の機敏、就職の挫折、そして大切な人との別れ。人生の居場所が見つからない典子だが、毎週お茶に通い続けることで、何かが変わっていった……。

■感想
真面目でおっちょこちょいの典子。現状では典子の境遇は何不自由ない幸せな人生のように思える。お茶を習い、うまくいかないことに困惑する典子。大学を卒業し就職するにしても出版社に受からず、バイトとして潜り込むのがやっとの典子。

家族は平和で、恐らくそれなりに裕福なのだろう。お茶を続けながら、従妹は結婚しお茶をやめていく。典子はひたすらお茶を通して人生の節目で様々なことを考える。ごく普通で平凡な人生なのかもしれないが、平凡なだけに共感できる部分が多いのかもしれない。

典子の人生に大きな転機が訪れたとしたら、それは婚約破棄されたタイミングだろう。何もかもがどうでもよくなりお茶にも通わない。ただ、それも一時のこと。お茶に通いだした典子は次第に心が穏やかとなり、新しい恋愛へも一歩踏み出すことができる。

典子はお茶においてもベテランとなり後輩ができるようになる。過去の自分を見ているようで微笑みを見せながらの典子。タイトルどおり、毎日が良い日だと思うことが重要なのだろう。

印象的なのは、昔の人は移動手段も電話もないので、今会っている人には、次にいつ会えるかわからない、という気持ちで会うことが大事らしい。確かに、そういう気持ちでいることは重要だろう。

典子はおざなりになりがちな両親との関係を見直すことになる。自分のことばかり考えていた典子がまたひとつ大人になる瞬間だろう。物語としては特別大きな出来事があるわけではない。もしかしたら、一般人でも同じような経験をした人が多いのかもしれない。お茶を通して人生を見つめなおす作品だ。

お茶受けとして登場する和菓子がおいしそうだ。



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