白鯨との闘い


 2018.6.7      過酷な漂流の日々 【白鯨との闘い】

                     
白鯨との闘い
評価:3

■ヒトコト感想
1800年代。鯨油に価値がある時代に、捕鯨船を用いた航海の物語だ。捕鯨船エセックス号の最年少乗組員であったハーマンの回想形式で物語はすすんでいく。エセックス号はクジラを求めて世界各地の海を航海し続ける。クジラ一匹倒すのも相当な労力を使う。強烈なのは、捕獲したクジラから鯨油を採取するシーンだ。

クジラの頭の中に入り込み、そこで油を採取する。まだ、石油が採掘されていない時代では、鯨油は何より貴重なものなのだろう。捕鯨の旅で、モンスターの白鯨に出会い船を破壊されてしまう。ここからが本作のメインなのかもしれない。小さな船三隻で漂流し続ける。生き残るために人はおぞましい行動にでる。衝撃的な展開だ。

■ストーリー
1820年の冬、ニューイングランドの捕鯨船エセックス号を襲ったのは、誰もが目を疑う、信じがたいものだった。その正体とは、人間のような復讐心を全身にみなぎらせた、とてつもなく巨大な一頭の鯨だったのだ。

実際に起こったこの海難事故に触発されて、ハーマン・メルヴィルは傑作『白鯨』を書き上げたが、メルヴィルの小説は物語の半分を述べているに過ぎない。難破した乗組員が嵐や飢餓や絶望と闘い、生き延びるため、およそ考えられない行動まで取らざるを得なくなる、その壮絶な後日譚を見届けよ。

■感想
エセックス号はクジラを捕獲し鯨油をもち帰る使命がある。クジラに出会い捕獲する方法は、クジラへ近づき銛を突き刺すという原始的な方法だ。クジラを捕獲してから鯨油を取り出す作業もまた強烈だ。一番良い油がとれるのはクジラの頭の中らしい。

クジラの頭上に穴をあけ、そこからバケツを入れて油を取り出す。油を漏れなく取るためには、クジラの頭の中に入り込み、中からくみ上げるしかない。まだ、石油が採掘されていない時代なので、鯨油は高級品なのだろう。

良い鯨油をとるためにはクジラを多く捕獲する必要がある。クジラを求めて海を漂い続けるエセックス号。そこで、ついに巨大なクジラである白鯨に出会う。そこで白鯨との迫力ある対決が描かれている。そして、白鯨への無謀な戦いを挑んだ代償は、エセックス号の破壊となって返ってくる。

小さな船3隻で逃げ出した乗組員たち。ここから長い漂流生活に入る。わずかな食糧で生き長らえたとしても、水と食料はいずれ底をつく。極限状態に追い込まれた人間はどのような行動にでるのか…。

長く苦しい漂流生活で、人はとうとう人間の領域を超えた行動をとることになる。生き延びるために、人が人を食べる。それも、次に誰が犠牲者になるかをくじ引きで決め、自ら命を絶つ。人は極限まで追い込まれると、ここまでになるのかという驚きとおぞましさに満ちた流れだ。

後日談としてハーマンが語っていることから、どこかで生き延びるすべがあるというのはわかるのだが、それにしてもすさまじい状況だ。一度は陸にたどりついたとしても、そこは誰も手助けなのない世界となると…。

白鯨との闘いより、極限状態の漂流がポイントかもしれない。



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