逆ソクラテス 


 2020.12.5      人に信頼されることで評価される 【逆ソクラテス】

                     
逆ソクラテス [ 伊坂幸太郎 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
思い込みやいじめ、貧富の差、虐待など、様々なことをテーマとし小学生たちをメインとした短編が収録されている。陰鬱で悲惨でかわいそうな物語かと思いきや、ラストではしっかりと逆転の流れがある。いつものように作中に登場する小学生たちは子供ばなれした会話を続ける。伊坂幸太郎節とでもいうのだろうか。理路整然とした語り口は、人間味がないようにも思えるが、それが魅力でもある。

淡々とした流れの中で最後にそれまでの状況から大逆転する何かがある。この爽快感が最高だ。貧乏だと思い込まれ周りからバカにされていた子が、実は金持ちだった。それまでいじめていた側の立場が逆転する場面というのは、読んでいて楽しくなってくる。

■ストーリー
逆境にもめげず簡単ではない現実に立ち向かい非日常的な出来事に巻き込まれながらもアンハッピーな展開を乗り越え僕たちは逆転する!無上の短編5編(書き下ろし3編)を収録。

■感想
表題作でもある「逆ソクラテス」は、思い込みの強い教師の考えを変えさせようと子供たちが奮闘する物語だ。成績が悪い子供をできないと決め付ける教師。カンニングまでさせて教師を見返そうと、優等生までも協力する。

この手の物語では、最後の最後で痛い目を見るパターンがあるのだが…。思い込みの激しい教師は、結局のところ子供を見直すことになる。ただ、物語としてそれで終わってしまってよいのか?という思いは拭い去れない。

「スロウではない」は、運動会のリレーでメンバーを決める際に、遅い子供がくじ引きで当たってしまい困惑する物語だ。転校生は遅いにも関わらず選ばれてしまう。クラスのリーダー的な女子は転校生がイジメられたから転校してきた、と思い込む。

そこから実際に運動会が始まってみると…。実は転校生は足が速く、他の子どもをごぼう抜きをした。そして、イジメられて転校してきたのではなく、クラスのリーダー的女子と同じようにイジメる側であったことがわかる。ラストの展開は衝撃的だ。

「非オプティマス」は複雑だ。学級崩壊になりかけのクラス内で授業を妨害する生徒がいる。教師は新人で頼りがいがない。子供は授業中にカンペンケースを落として授業を妨害する。教師はどのような気持ちで授業をするのか。。。

ついに授業参観の日となるのだが、授業の妨害は続く…。ここで教師が淡々と子供たちに語る場面がある。これが非常に心に響いた。人を見て叱ったり、叱らなかったりしてはならない。人は信頼されることによって評価される。なんだか人付き合いの本質のような気がした。

子供が主役なだけに、純粋に心に響くものがある。



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