愚行録


 2021.10.2      登場人物はみんなクズだ【愚行録】

                     
愚行録 /妻夫木聡
評価:3.5

■ヒトコト感想
何の予備知識なしに本作を見た。週刊誌の記者である田中が、育児放棄で逮捕された妹を見舞う。そこから、田中が取材する一家惨殺事件の全容が明らかとなる。田中が様々な関係者へ話を聞きにいくと、事件の全容が明らかとなる。誰が夫・田向と妻・友希恵に恨みをもっていたのか。田中の想像以上に様々な人物から恨みをもつふたり。

中盤までは田中と妹の関係と、事件にはまったく関係がないかと思われたのだが…。大学時代の恨みがのちの一家惨殺事件へとつながっている。強烈なのは、それぞれの身勝手さだ。内部進学と外部から受験入学した者の地位が違うような大学生活。華やかな表とは別に、裏ではドロドロとした人間関係があった。登場人物たちは皆とんでもない者たちだ。

■ストーリー
エリートサラリーマンの夫、美人で完璧な妻、そして可愛い一人娘の田向(たこう)一家。絵に描いたように幸せな家族を襲った一家惨殺事件は迷宮入りしたまま一年が過ぎた。週刊誌の記者である田中は、改めて事件の真相に迫ろうと取材を開始する。殺害された夫・田向浩樹の会社同僚の渡辺正人。 妻・友希恵の大学同期であった宮村淳子。

その淳子の恋人であった尾形孝之。そして、大学時代の浩樹と付き合っていた稲村恵美。ところが、関係者たちの証言から浮かび上がってきたのは、理想的と思われた夫婦の見た目からはかけ離れた実像、そして、証言者たち自らの思いもよらない姿であった。その一方で、田中も問題を抱えている。妹の光子が育児放棄の疑いで逮捕されていたのだ――

■感想
一家殺害事件が起きた。誰もがうらやむエリートサラリーマンの家族。新築の家で起きた惨劇。週刊誌の記者である田中が関係者に取材し、サラリーマン家庭に恨みをもつ者を探し出そうとする。すべてにおいて陰鬱な物語となっている。

主人公の田中は妹が幼児虐待の罪で逮捕されている。覇気のない暗い表情の田中が、事件の関係者へインタビューを続ける。関係者の会話から、殺害された夫婦の過去の悪行が明らかとなる。話を聞きつづけるうちに、新たな犯人と思わしき人物が浮かび上がってくる。。

田向と友希恵の大学時代がポイントとなる。ふたりとも俗に言うリア充なタイプで、田向は自分の目的を達成するために女を道具としか思っていない。田向に利用された女が犯人かと思い、田中は話を聞きに行くのだが…。

まず、田向が友達の女を道具としか見ない行動の数々が強烈だ。自分が就職したい企業の社長の娘だからと複数の女性と付き合う。目的を達成するとあっさりと棄てる。そのことを一部の女は理解しているというのが恐ろしい。友希恵にしてもセレブな仲間たちと実は極悪なことを裏でしていたという流れだ。

田中の妹が事件とどう関係するのか。実は田中の妹も友希恵と同じ大学にいた。これが判明するのは物語の後半で、ここから怒涛の展開となる。さらに強烈なのは、田中の妹のことを話をした女に対して、田中は衝動的に花瓶を頭に振り下ろす。

淡々と倒れた相手に花瓶を振り下ろし続ける田中。その後には、他の者が犯人となるような仕掛けも忘れない。タイトルどおり、愚行を続ける者たちのムナクソ悪くなるような作品であることは間違いない。それでも先がどうなるのか気になるの作品だ。

物語の全体を包み込む陰鬱な雰囲気は強烈だ。



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