合葬


 2018.3.30      死しかない若者たち 【合葬】

                     
合葬 [ 柳楽優弥 ]
評価:3

■ヒトコト感想
原作小説は未読。江戸末期の切ない青春武士物語とでもいえば良いのだろうか。彰義隊に参加した若者たちが死にに行くように戦いへと挑んでいく。将軍に対する信じられないような忠誠心と、死をも恐れぬ活動。三人の若者侍をそれぞれの立場で描いている。将軍に心酔し戦いを求める極。町娘に恋をして死ぬことに恐怖を感じる柾之助。仲間を救おうと戦いを回避しようとする悌二郎。

結局は流れのままに激しい戦いへと繋がっていく。若者たちの悲しい定めを感じずにはいられない。ラストの極の切腹シーンは強烈なインパクトがある。死にきれず、介錯を頼んでも柾之助はおじけずく。痛みで苦しむ極の姿は強烈なインパクトを残す映像だ。

■ストーリー
知られざる彰義隊の真実 終わりゆく江戸 切なく揺れ動く 青春最後の一ヶ月 慶応四年(1868年)四月十一日、三百年に亘る江戸幕府の時代が終わりを告げた。 第十五代将軍・徳川慶喜は新政府軍に江戸城を明け渡し、明治時代が幕を開けたのである。

鳥羽・伏見の戦い後、将軍の警護および江戸市中の治安維持を目的として有志により結成された「彰義隊」。高い志をもって結成され江戸の民衆から慕われながらも、幕府の解体とともに反政府的な立場に追いやられてしまった彰義隊は、「新撰組」や「白虎隊」に比べると、これまであまり語られることがなかった。

『合葬』は、将軍に熱い忠誠心を持ち、自らの意思で彰義隊に加わった青年・極 (柳楽優弥)と、養子先から追い出され、行くあてもなく赴くままに入隊した柾之助(瀬戸康史)、彰義隊の存在に異を唱えながらもそこに加わらざるをえなかった悌二郎(岡山天音)の、時代に翻弄された数奇な運命を描く。

■感想
彰義隊のことはよく知らない。作中では将軍を守る有志の集まりということになっている。血気盛んな若者たちが集う舞台。一度戦争へと流れが傾くと、負けると分かっていても誰も止めることはできない。恋愛や仲間との関係に悩む若い侍たち。

ひとり将軍への強固な忠誠を誓う極だけは、死をも恐れず突っ走ることになる。悌二郎が極を取り戻すため長崎からやってくる。しかし、あべこべに隊に組み込まれることになる。最後まで悌二郎は戦争を止めようとする。そんな者が一番に犠牲になるのはなんとも皮肉だ。

柾之助は行くあてがないので入隊したので、他の者たちとはテンションが違う。戦いよりも恋愛に気持ちが向いている。恋した町娘が実は極に恋をしていたと知った時のショックは相当なものなのだろう。柾之助は一番根性がないともいえるが、最後まで生き残ったことを考えると、正しいのかもしれない。

周りは死をも恐れない荒くれ者たちばかり。そんな中で隠れてひっそりと自分のポリシーを貫くのはなかなかできることではない。ラストで極への介錯ができなかったことが柾之助のすべてを表現している。

極は死に向かう危ない男だ。将軍に心酔し、自分のせいで悌二郎が死んだことに責任を感じる。死に急ぐ者に限って生き残ってしまうのは定番だろう。ただ、そこでのうのうと生きることは極には許されていない。恐らく極には戦争が始まった瞬間から、最後は死ぬことだけしか考えていないのだろう。

それは討ち死にするのか切腹するのかの違いでしかない。空家でひっそりと切腹するシーンは強烈だ。死にきれずにひたすら苦しみ続ける。苦しそうなうめき声は強烈なインパクトがある。

全編暗く、陰鬱となる物語だ。


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