2018.7.12 たまごかけご飯が食べたくなる 【ごはんぐるり】
ごはんぐるり/西加奈子
評価:3
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■ヒトコト感想
西加奈子が描いた食に関するエッセイ集。印象的なのはやはり幼少期にイランに住んでいたということでの特殊な食についての記述だ。作者は小説の中で登場してくる食べ物に対して食欲がわくらしいのだが…。イランやカイロでの食事事情の方がインパクトがでかい。日本の食が何より安全だということ。そして、卵かけご飯が何よりもごちそうだというのは意外だ。
ごはんにまつわる作者のエッセイは、特殊な海外生活での出来事について知らず知らずのうちに集中して読んでしまう。海外では生水厳禁ということや、生野菜を口にするのは厳しいなど非常に強烈な状況がある。そんな中でこそ、ごく普通の日本食がごちそうに感じるのだろう。
■ストーリー
小学生のときカイロで食べた卵かけごはんが、いままでで一番おいしかった〉〈なぜ大阪のおばさんは、いつもアメちゃん持っていて、絶妙なタイミングで「好きなん選び」と薦めてくるのか〉 〈小説のなかで出会った未知の食べ物―アップル・ジェリーつき塩ふりクラッカー・グレイヴィーでとろ煮にしたマーモットの肉・そこに種が沈んでいる甘いレモネードとタフィー! それってどんな食べ物?と想像の羽をふくらませた日々〉
〈旅行の道程っで何かを食べることに特別な楽しさを感じる。コンビニでスナック菓子を買い車中で食べておなかいっぱい。美味しい蕎麦を残して、友達に怒られたこと〉〈小学生時代、ドイツのサマースクールでカイロの二人組だけが生野菜サラダに手を出さなかった記憶。久しぶりに食べた生野菜のおいしさ〉
〈夢は男子校の寮母になって、とんかつやしょうが焼きをがつがつ食べてもらうこと〉などなど、ごはんにまつわる子供時代の思い出、失敗談・笑い話が満載。読むとますます西加奈子ファンになること間違いなし、の楽しいエッセイ集。
■感想
ごはんにまつわる西加奈子のエッセイ集。旅行先でうまいものを食べるのではなく、サービスエリアでホットドックを食べたり、道中の車の中でポテチを食べたりと、普段なら絶対に食べないものを旅のテンションにより思わず食べてしまう。これはよくわかる。
自分も、高速道路に乗ると必ずサービスエリアに立ち寄り何かしら食べてしまう。旅先のおいしいものが待っているとわかっていても、それをやめることはできない。ジャンクフードが好きなわけでもないが、非日常が味覚を変えているのだろう。
作者の幼少時代の食事事情は強烈だ。特にイランやカイロでの食生活はすさまじい。まじりっけなしの白米を手に入れることが難しく、母親がひとつひとつピンセットでゴミや虫を取り出して白米として炊く。当然ながら、生野菜は厳禁。生卵なんて手に入るわけもない。
そんな状態では当たり前に食べることができる日本食が当たり前ではなくなるのだろう。久しぶりに食べた生野菜のおいしさや、生水のすばらしさ。日本食のありがたみを感じるのは、海外に住んでいるからこそなのだろう。
作者は小説内の食べ物に魅力を感じるらしい。確かに小説で登場する食べ物はうまそうだ。同じレシピで作ったとしても、同じようにおいしいと感じるとは限らない。西加奈子が描くエッセイもそれなりにおいしそうと感じる食べ物はある。
それよりも関西人らしい軽妙な語り口が、エッセイを面白くしている。1のことを10に膨らましてエッセイとして描いているのかもしれないが、面白いことにはかわりない。普通のエッセイよりも「ごはん」という縛りがあった方が面白いのだろう。
思わず、卵かけご飯が食べたくなった。
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