不死鳥少年 アンディ・タケシの東京大空襲 


 2019.9.20      人と家屋を焼きつくす焼夷弾 【不死鳥少年 アンディ・タケシの東京大空襲】

                     
不死鳥少年 アンディ・タケシの東京大空襲 [ 石田衣良 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
戦時中、東京大空襲を経験した少年を描く。タケシはアメリカ人の父と日本人の母の間に生まれたハーフだ。戦争中は日本においてタケシの容姿は目立つことから、イジメや虐待のターゲットとされる。序盤から中盤にかけては戦時中の貧しさと、周りからの偏見。そして友達とのいさかいや友情などが描かれている。

中学生らしいほのかな恋心も描かれており、貧しいながらも楽しく平和な日常が描かれていた。それが、東京大空襲の日にすべてが変わる。これほど強烈な空襲があったのかと驚いた。人を殺し建物を焼き尽くすためだけに用意された焼夷弾。鉄の棒が空中から降ってきて体に刺さりガソリンをまき散らし焼き尽くす。まさに人間と家屋をターゲットとしたとんでもない兵器だ。

■ストーリー
父の国の大空襲から母を守り、炎の夜を生き延びろ!“アンダイング=不死身”とあだ名をつけられた日系二世の少年・時田武14歳。母・君代と家族を率いて、炎そのものとなった街を駆ける。

■感想
タケシは普通の中学生だが、アメリカ人の血が半分入っている。太平洋戦争が始まるとタケシは東京でおじさんの家に母親とともに生活することになる。中学生の育ちざかりの時期に戦争で物資が不足した状態は辛い。作中では常に腹をすかせたタケシたち中学生が描かれている。

戦時中は配給だけでは生活できない。闇物資を手に入れてやっと人並みな生活ができる。タケシたちは、自分たちの状況をしっかりとわきまえながら貧しいながらも楽しく日々を過ごしている。

タケシと1つ屋根の下で暮らす従妹との恋愛模様も描かれている。同級生たち3人やそのほか一緒に争うライバル関係の友達もいる。お互いの主張がぶつかりあい、タケシの容姿からイジメのようなものがあったりするのだが、最終的には相撲で対決したりと健全な流れとなっている。

戦争が激しくなると食うことに精一杯となる。他のことには目がいかず、勉強や将来の夢なども朧気となる。物語は後半に一気に変化する。東京大空襲が発生する。ここでタケシは死地を何度も経験するのだが…。タケシ自身は自分に特殊な能力があることに気づく。

大空襲での焼夷弾の威力は衝撃的すぎる。人と家を燃やすためだだけの兵器だ。真っ暗闇の中で焼夷弾の鉄の棒が空から降ってくるその音だけが響き渡る。人間の体に刺さるか地面に突き刺さり、周囲にガソリンをまき散らし火をつける。

瞬く間に火は燃え広がり周囲は火の海と化す。人に突き刺さると即死する。運よく生きていても焼き殺されてしまう。タケシたち家族は逃げ続けるが、何度も焼夷弾で死にそうになる。そのたびにタケシの特殊能力で事態を打開するのだが…。

東京大空襲の描写は衝撃的すぎる。



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