フーガはユーガ 


 2019.10.17      双子の入れ替わり能力 【フーガはユーガ】

                     
フーガはユーガ /伊坂幸太郎 (単行本)
評価:3
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■ヒトコト感想
双子がおりなす不思議な物語。優我と風我の双子の兄弟はある日突然入れ替わる経験をする。誕生日の日に二時間おきに入れ替わる。双子であっても気づく人は気づく。そんな双子の兄弟が凶悪犯と対峙し能力を使って対抗する物語だ。双子は父親に虐待されていたりと、よい境遇ではない。なぜ二人が入れ替わることになったのかの説明はない。

世の中の双子がもしかしたら同じ能力があるのでは?とすら思えてしまう。不思議な力をもつ双子がそれぞれの人生を歩みつつ、そこから強烈なインパクトのある事件に遭遇する。優我は勉強が得意で風我は運動が得意という双子らしからぬふたり。それぞれ恋人らしき人も現れるのだが…。ラストの流れはなんだか切なくなる。

■ストーリー
常盤優我は仙台市のファミレスで一人の男に語り出す。双子の弟・風我のこと、決して幸せでなかった子供時代のこと、そして、彼ら兄弟だけの特別な「アレ」のこと。僕たちは双子で、僕たちは不運で、だけど僕たちは、手強い。

■感想
子ども時代に父親から激しい虐待を受けてきたふたり。青年期となっても幼いころの虐待の記憶が薄れることはない。物語の流れとしては、この虐待経験があったから双子の入れ替わり能力が生まれたということになっている。

物語は優我の回想形式ですすんでいく。高杉という男に能力や自分たちの生い立ちについて語る。ここで双子の特殊能力がかなり限定的であることが判明する。誕生日に2時間おきに起きる入れ替わり。印象としては、ただ人が入れ替わるだけなので、そこまで役立つ能力ではない。

優我と風我はそれぞれ別の青春時代を過ごす。優我は大学へ進学するが風我は高校卒業するとすぐに働き始める。対象的な二人ではあるが、仲はよい。風我には恋人ができる。ここで風我の恋人絡みで怪しげな展開となる。

恋人が父親から虐待を受けている。恋人を助けるためにふたりは入れ替わりの能力を駆使して恋人を虐待から救い出す。本作ではいくつか事件が発生するのだが、そのどれもが普通ではない異常な事件となっている。異常者が絡む事件だ。

ラストは今まで優我が語りかけていた高杉が関係してくる。物語の最後の悪ともいうべき高杉。絶対絶命のピンチに優我は陥るが、双子の特殊能力により危機を脱するのだが…。最後の最後に双子の能力には、ある限定的な状況で入れ替わりではない状態になるらしい。

物語としては、悪は罰せられる形となるため、それなりに爽快感はある。それでも、最後の流れは少し切なくなる。結局のところ双子の入れ替わり能力というのは、すべての双子がもっているのかも?なんていう会話がでるあたり伊坂幸太郎作品らしい。

ただ人が入れ替わるだけで、ここまで話を展開させるのはすごい。



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