フォックスキャッチャー


 2020.9.12      心に闇をかかえる大富豪デュポンの異常さ【フォックスキャッチャー】

                     
フォックスキャッチャー
評価:3.5

■ヒトコト感想
実話をもとにした作品。レスリングのオリンピック金メダリストが殺害される事件だ。大富豪であるジョン・デュポンは私設のレスリングチーム・フォックスキャッチャーを作りあげ、そこに有望な選手をスカウトする。デュポンの異常さが本作のポイントだろう。有力選手であるマークとその兄であるデイヴをスカウトする。信じられないような好待遇に目がくらむマイク。

デュポンに飼われるような形でレスリング選手として実績を上げていくマーク。このあたりから、デュポンのいびつさがでてくる。母親に対しての対抗心。そして、自己顕示欲が極端に強い。周りはデュポンの側近から金をもらいレスリングの試合で負けたりもする。マイクやデイヴも、デュポンに気を使いながらの活動となる。デュポンの異常さはすさまじい。

■ストーリー
この世にも奇妙な実話は、1984年のロサンゼルス・オリンピックで金メダルに輝いたレスリング選手、マーク・シュルツに届いた突然のオファーから始まる。有名な大財閥デュポン家の御曹司ジョン・デュポンが、自ら率いるレスリング・チーム“フォックスキャッチャー"にマークを誘い、ソウル・オリンピックでの世界制覇をめざそうと持ちかけてきたのだ。その夢のような話に飛びついたマークは破格の年俸で契約を結び、デュポンがペンシルベニア州の広大な所有地に建造した最先端の施設でトレーニングを開始する。

しかしデュポンの度重なる突飛な言動、マークの精神的な混乱がエスカレートするにつれ、ふたりの主従関係はじわじわと崩壊。ついにはマークの兄で、同じく金メダリストのデイヴを巻き込み、取り返しのつかない悲劇へと突き進んでいくのだった……。

■感想
デュポンはなぜデイヴを殺害したのか。結末だけ見ると衝動的な殺害のように思えるが、本作ではそれなりに理由があるような流れとなっている。まず将来有望なマークをスカウトしたことからおかしくなってくる。デュポンは金をかけてトレーニング施設を作りマークを育てる。

マークもデュポンの期待に応えようと必死になる。序盤ではデュポンはレスリングに熱をあげる大富豪でしかないのだが、たまにどこを見ているのかわからない表情をしているのが恐ろしい。デュポンの心の闇が垣間見える瞬間だ。

デュポンはよりチームを強化するためにマイクの兄であるデイヴもスカウトする。家族を優先にしているデイヴだが、マイクのためにチームへ参加することを決断する。このデイヴが来たことで、チームの力は飛躍的にUPする。

デュポンがコーチでデイヴが副コーチという並びだが、明らかにデイヴがチーム力を高めるために貢献している。デュポンは自己顕示欲を高めるために、慈善活動やスピーチなどを積極的にこなす。そして、マイクやデイヴはデュポンの良いところばかりをインタビューやスピーチで答えたりもする。

マイクが試合でうまくいかず、デュポンとの関係も悪化していく。デュポン自身も母親が死んだことで変化していく。デュポンの表情は常に無表情になり、何を考えているかわからない。突然爆発しそうな雰囲気がある。周りはハレ物に触るような扱いをする。

しだいに周りもデュポンがおかしいことに気づき始めるのだが…。やはりラストの場面は強烈だ。デイヴに対する妬みの気持ちなのか。はたから見るとデイヴは十分デュポンを尊重しているのだが、デュポンは裏を読み、自分がバカにされていると感じたのだろうか。

デュポン役の俳優はとてつもない演技力だ。無表情だがその時の感情がなぜか読み取れてしまう。



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