フィデル誕生 ポーラスター3 


 2019.8.19      革命家カストロの生い立ち 【フィデル誕生 ポーラスター3】

                     
フィデル誕生 ポーラースター3 (文春文庫) [ 海堂 尊 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
ポーラスターシリーズ。過去のシリーズはキューバや南米の歴史のような雰囲気が強く、読んでいてもなじみのない人物の名前ばかりが登場し、読み進めるのがつらかった。本作でも、若干その雰囲気はあるのだが、今までのシリーズよりは格段に読みやすくなっている。キューバ革命の英雄であるカストロの出自を描いた作品。

カストロだけでなく、その父親がどのような生い立ちを過ごし、カストロの幼少期がどうだったのかが描かれている。革命家と言われた男はどのようにして作り上げられたのか。歴史的事実とアメリカとの関係まで、カストロの生い立ちを読みつつ、歴史の勉強もできる。若干、とっつきにくい部分があるのが、これでも緩和されている方だ。

■ストーリー
19世紀末、キューバの独立戦争に米西戦争で介入した米国が勝利し、スペインの後釜に居座った。スペイン軍の少年兵アンヘルは仲間と脱走し、サンチャゴ・デ・クーバで戦後、財を築く。その彼が小作の娘に産ませた男子こそ“幼き獅子”フィデル・カストロだった。キューバ革命の英雄カストロ父子を描いた、シリーズ第3弾。

■感想
キューバの英雄カストロを描いた作品。キューバの歴史についてほとんど知識がなかったため、小難しい場面もある。カストロがどのような環境で育ってきたのか。それを説明するために、まずはカストロの父親の生い立ちから描かれている。

カストロの父親であるアンヘルは、その体を活かし戦争に参加しながら農場で財を築く。アンヘルは学はないが、運よく成功する。複数の愛人を作り、正妻にいとまれながらも、多くの子供たちの中のひとりがカストロということになる。

カストロはすさまじい才能を発揮する。見るだけで本をすべて記憶できる能力があり、あっという間に図書館の本をすべて読破してしまう。幼少期はただの暴れん坊だったカストロが成長していくにつれ、政治家としての素養があることの証明でもある行動をとる。

カストロの幼少期の環境は虐待に近いのだが、そこから抜け出す手段を自ら見つけ出し、そして成功していく。何かをやり遂げる力や、強者に対してもひるまず対決姿勢を見せていくのは、のちの革命家としての能力のひとつなのだろう。

カストロの才能に気づいた者たちが身近にいたこともカストロの助けになったのだろう。政治家であり弁護士でもあるピノの存在は大きい。アンヘルと親友であり戦友であったピノは、アンヘルの妾の子であるカストロの扱いに困惑しつつも、その才能に気づきカストロが成長できる環境へと導く。

ピノが正妻とアンヘルの冷え切った関係に終止符を打つような策略を練る。このピノの行動がのちにカストロに対して大きな意味があったのだろう。まだ本格的な活躍はしていないが、カストロが革命家の片りんをみせる場面が多数ある。

続編ではカストロがさらに大活躍することだろう。



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