ドランのキャデラック 


 2021.7.1      キャデラックを道路の落とし穴に落とす 【ドランのキャデラック】

                     
ドランのキャデラック 文春文庫/スティーヴン・キング
評価:2.5
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■ヒトコト感想
スティーヴン・キングの短編集。ホラーの要素が強い短編がほとんどだが、圧倒的なインパクトがあるのは間違いなく表題作である「ドランのキャデラック」だ。どうやら映画化もされているらしいのだが、本作を原作とした映画を見たくなるのは間違いない。

そのほかにも「チャタリー・ティース」があるのだが、歯がついたガチャガチャと口が開いたり閉じたりするおもちゃの物語だ。この歯のおもちゃが登場してくるとなると、誰もが想像するのがそのおもちゃが噛みついてくるシーンなのだが…。まさにその想像どおりとなる。おもちゃであろうと、歯で噛みつかれるのは痛さが想像できる。鼻に噛みつかれたりすると、とんでもなく痛いのだろうと想像してしまう。

■ストーリー
敵は厳重な警備下にいる。倒せるチャンスはただひとつ、自動車で移動している間だけ…。妻を殺された男が犯罪組織の大物に挑む復讐戦。完全防護のキャデラック相手に仕組んだ奇想天外な計略を描く表題作ほか、キング一流の恐怖の物語から意外な結末が待つアイデア・ストーリーまで、巨匠の多彩な才能を味わえる傑作短篇集。

■感想
「ドランのキャデラック」は強烈だ。男は妻を殺された復讐のためにドランを狙うのだが、ドランは犯罪組織の大物なので完全防備されている。ドランに復讐するチャンスはキャデラックに乗っている時しかない。ただ、ドランのキャデラック自身も完全防備されている。

そんなドランに対してどのようにして復讐を行うのか。主人公の男が、序盤には男の体では到底やりきれないような肉体労働に従事しようとする。筋肉痛で体を痛めながら仕事をする。何のためにこんな苦行をしているのか読者は理解できない。

中盤からドランに復讐するために道路工事をしていると判明する。ここから、ドランに対しての復讐がすさまじい。う回路をつくり、ドランのキャデラックを道路に開けた穴に落とす。そこでドランをキャデラックごと埋めてしまう。

とんでもない計画だ。そして、それを最後まで実行してしまうまでの過程がすばらしい。ドランもキャデラックが落とし穴にはまりこんでから、ひたすら強がり男に対して取引を持ち掛けたりもする。この圧倒的な往生際の悪さも良い。

その他の短編もテレビ映画化されたりと、映像化されている作品もある。「チャタリー・ティース」は、おもちゃが噛みついてくるという、ある程度想定できる作品だ。ただ、それでもアメリカ独特の噛みつくおもちゃを頭の中で想像し、そのおもちゃが突然動きだすのは、恐ろしくなる。

もしかしたら、他の結末がありえるかも、と想像したのだが、オーソドックスな展開となる。すべてがちょっと後味の悪いホラー作品ではあるが、スティーヴン・キングファンならば間違いなく楽しめるだろう。

それぞれの短編は短いのでサラリと読むことができる。



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