デビルズ・シティ


 2021.6.12      人間のアパートに悪魔が住み着いている【デビルズ・シティ】

                     
デビルズ・シティ [ トバイアス・イェリネク ]
評価:2

■ヒトコト感想
人間の中に悪魔が存在し人間のふりをして人間と共にアパートに住んでいる。悪魔の見た目がCGでのリアルさではなく、いかにも被り物的な雰囲気があるので一気にB級映画の雰囲気が強くなる。悪魔のヴァインがアパートに住む少女サラと交流をもつ。人間の不幸をエネルギーとして生きる悪魔たちに変化が訪れる。ことの発端はヴァインが虐待されていたサラを助けたことで、不幸が薄れ悪魔たちが餓死する危険性がでてくる。

そもそもの世界観の異様さと、ヴァインたち悪魔は人間の姿と悪魔の姿をいったりきたりする。人間は悪魔を知らないが、悪魔たちは人間から不幸のエネルギーを吸い取ろうとする。悪魔間でのイザコザが昔の仮面ライダーの悪の組織のように見えてしまった。

■ストーリー
700歳のヴァインは仲間の悪魔たちと人間の姿をしつつ貸しビルに住んでいる。そのビルに住む人間たちからは麻薬の売人と思われているが、実は悪魔たちが人間たちの不幸をエネルギーとして生き永らえてた。ある日、ヴァインはアパートに住む少女サラを助けるが、本来悪魔には無い優しさや愛情といった感情が出てしまったことで、人間の不幸をエネルギーとする悪魔たちは飢え苦しむことになり、悪魔の世界と人間の世界のバランスが微妙に崩れ始めてしまう・・・。滅びるのは人間か、それとも悪魔か。共存と対立の間でヴァインは重大な決断を迫られていく―。

■感想
陰鬱な雰囲気のアパート内部で少女サラは虐待されている。同じアパートに住む薬の売人と思わしき奇妙な者たちは、実は悪魔だった。人間からは普通の人間にしか見えない悪魔たち。その悪魔たちは人間の不幸なエネルギーを生命の力としている。

つまり、同じアパートの人間たちが幸せになると悪魔たちは餓死してしまうということだ。700歳のヴァインがサラを助けたことで、アパート内部に変化が訪れる。サラとヴァインの交流ははたから見ると幸せな一ページのように見えてしまう。

悪魔は不幸な人間が大好物だ。にもかかわらず、ヴァインはサラを助け、サラを幸せにしようとする。悪魔の仲間から餓死してしまうとヴァインにクレームが入る。この悪魔たちが妙にチープだ。悪魔同士のイザコザについては、ほとんど着ぐるみたちがドタバタしているように見えてしまう。

悪魔は人間の姿に化けるのだが、人間の姿からは想像つかない悪魔となっている。ヴァインだけが唯一まともなようだが、ヴァインの中でも葛藤がある。ヴァインはサラからしたら良いお兄ちゃんのような感じなのだろう。

滅びるのは人間なのか悪魔なのか。そもそもの世界観がよくわからないまま物語はすすんでいく。人間の中に悪魔が紛れ込んでいるのは良い。ただ、ヴァインがサラに悪魔の姿を見せるシーンがあるのだが、そこでサラが冷静に受け止めているのが強烈だ。

サラからするとヴァインは信頼できる相手なので、たとえ見た目が変わったとしても受け入れるのだろう。少女サラが可憐で美しい。対比するように悪魔の女たちの浅ましさが強烈なインパクトがある。

独特な世界観だ。



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