デスぺレーション 上 


 2019.5.16      ゾンビのような警官に襲われる恐怖 【デスぺレーション 上】

                     
デスペレーション 上巻 / スティーヴン・キング / 新潮社 [文庫]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
アメリカの田舎の州で、通りかかる人々を次々と拉致し殺害してきた警官がいた。デスペレーションという鉱山町で起こった悲劇。まずこの警官の登場シーンがとんでもなく恐ろしい。誰もがもっている警官に対する恐怖。自分にやましいことがなくとも、警官に車を止められると緊張するものだ。そんな状態で、警官は容赦なく人々を問答無用で拘束していく。

その場であっさりと殺す場合もあれば、地下室に閉じ込め、じっくりとなぶり殺しのような真似をしたりもする。上巻では警官にとらわれた者たちの、それまでのエピソードが次々と語られている。どのような人物が警官に拘束されているのか。下巻に向けて、この登場人物たちがどうなっていくのかがポイントだろう。

■ストーリー
ネヴァダ州の砂漠を突っきるハイウェイ50。一人の警官が、通りがかる人々を次々と拉致していた。彼らが幽閉されたのは、デスペレーションという名の寂れた鉱山町。しかも、町の住民はこの警官の手で皆殺しにされていた。妹を目前で殺された少年デヴィッドは、神への祈りを武器に、囚われの人々を救おうとするが…善と悪、生命と愛という荘厳なテーマに挑む、キング畢生の大作。

■感想
鉱山町のデスペレーションで巻き起こる恐怖。ハイウェイを走る夫婦を襲う恐怖。ひとりの警官が夫婦の車を止めて、取り調べをする。そこで警官の容赦ない行動の数々が描かれる。そして、警官に連れられてきた先には、同じように警官に拘束されてきた者たちがとらわれていた。

ここで子供だろうが女だろうが老人だろうが関係なく警官は始末しようとする。さらには、デスペレーションの町人を皆殺しにしていた。この流れがすさまじい。警官はまるで魔物に取りつかれているかのように異常な行動をとる。

デスペレーションでの警官の行動は常軌を逸している。警官に囚われた者たちを監視するために獰猛なコヨーテを用意したりもする。妹を目の前で殺された少年デヴィッドは、小さな体をたくみに利用し、囚われた人々を助け出すために牢屋から抜け出し助けを呼ぼうとする。

デヴィッドは巨大な拳銃を持ち果敢にコヨーテに対抗する。皆を助けるために、コヨーテに打ち勝ち、さらには警官がいない隙に鍵を手に入れて人々が囚われている牢屋を開けようとする。このデヴィッドの勇敢さはすさまじい。

ハイウェイを通りかかる人々は、デスペレーションの怪しげな雰囲気に戸惑うことになる。警官により町の人々は皆殺しにされていた。デヴィッドがひとり奮闘しているが、警官の恐ろしさには強烈なインパクトがある。

まるで魔物のように、本来ならば死んでも良いような状況でありながら、ひたすらゾンビのように襲い掛かってくる警官。この得体のしれない恐怖は上巻全体を包んでいる。まだ警官が何者かが判断できないというのもあるのだろう。少年デヴィッドが果敢に挑む姿が心に感動を呼び起こす。

下巻に向けて警官の正体が明らかとなるのだろう。



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