デスぺレーション 下 


 2019.9.8      取りついた悪は次のとりつき先を探す 【デスぺレーション 下】

                     
デスペレーション 下巻 / スティーヴン・キング / 新潮社 [文庫]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
上巻ではデスペレーションという鉱山町で巻き起こる異常な警官の恐怖が描かれていた。警官の有無を言わせぬ圧倒的な暴力には読んでいて強烈な恐怖感を覚えた。それが下巻となり、警官が異常な行動をとり始めたことの理由が判明する。殺戮を繰り返す悪は、人から動物にまで入り込むことができる。古代から続く悪ということなのか。

鉱山の奥深く、偶然掘り当てられた悪。警官の魔の手から逃げ出した一行の中には、特殊な能力を持つ少年・デヴィッドがいた。悪はデヴィッドの存在を邪魔と考え始末しようとするのだが…。逃げ出した一行の中では作家のマリンヴィルが少年の能力に気づく。ラストでは、この太古から続く悪と、どう決着をつけるかが描かれている。

■ストーリー
警官の魔手を逃れた生存者たちは、荒れ果てた映画館で息をひそめていた。作家マリンヴィルは、一行を導く少年の持つ神がかりの能力に気づき、この一件に人知を超えた力が及んでいることを知る。さらに、多くの鉱夫を生き埋めにした落盤事故が過去に起きたことが判明。警官を狂気に追い込んだのは、犠牲者の怨念なのか?かくして、殺戮を繰り返す悪の正体が、ついに明かされる。

■感想
殺戮をくりかえす悪魔のような警官。警官から逃げ出した一行。家族を殺された者や半殺しにされた者まで。一行はひっそりと映画館に潜むのだが…。警官の中に存在する悪の元凶が新たな体を求めて動き出す。警官は何か悪の存在にとりつかれ殺戮を繰り返していた。

過去に多くの人を巻き込んだ鉱山の落盤事故が起きた。その場所が悪が生まれた発端なのだろうか。目に見えない悪が、人にとりつき、その体を変化させていく。次のとりつき先に選ばれた者は、逆に悪の動物たちから守られたりもする。

悪の存在は、奇妙な言葉を操り、周りの動物たちをも操作する。次のとりつき先に選ばれた者は、それら危険な動物たちから攻撃されることはない。自分の身内が、次のとりつき先に選ばれるのはショッキングな出来事だろう。

警官から逃げ出せたは良いが、一緒に逃げた仲間のうち一人が、恐ろしい殺戮の悪魔に様変わりする。コヨーテや危険な生物たちの攻撃をかわしながら、デヴィッドを中心として悪をせん滅しようとする。大きな犠牲をはらわなければ倒すことができない相手だ。

ラストは爆弾を使ってとりつかれた人もろとも悪を葬り去ろうとする。デヴィッドは最後まで戦おうとする。悪の存在を倒す作業はわりとありきたりかもしれないが、物語としてその後日談が語られている。この惨状をどのようにして警察に説明するのか。

真実を告白したところで誰も信用しない。強烈な恐怖の経験をしたにも関わらず、そのことを共有できる者は少ない。決して誰にも信じられない経験を心に隠し持ちながら今後生活していくことの辛さもある。

ラストの展開は何かゴチャゴチャしていた。



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