第四解剖室 


 2020.11.17      意識のある状態で解剖される恐怖 【第四解剖室】

                     
第四解剖室 / スティーヴン キング
評価:2.5
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■ヒトコト感想
スティーヴン・キングの短編集。キング作品を読み慣れてる人にとってはなんてことないかもしれないが、初めての人は、その残虐描写にちょっと戸惑うかもしれない。ただ倒れただけの男が病院に運ばれ、いつの間にか解剖室へと運び込まれている。ここから先は、簡単に想像できることだろう。

意識はしっかりあるのだが、外部にその意思表示ができない。医者はただ目の前にある肉の塊を機械的に解剖しようとする。想像するだけで恐ろしい。もしかしたら、現実の世界でも死んだと思って解剖されたとしても当人の意識ははっきりしていて、痛みも生きているときと同じように感じていたとしたら…。まさにとんでもない苦行ということになるのだろう。

■ストーリー
私はまだ死んでいない、死んでいないはずだ。ゴルフをしていて倒れた、ただそれだけだ。それだけなのに。だが、目の前にある解剖用の大鋏は腹へと迫ってくる…切り刻まれる恐怖を描いた標題作のほか、ホラーからサスペンス、ファンタジー、O・ヘンリ賞を受賞した文芸作品まで、幅広いジャンルにわたって天才ぶりを発揮してきた巨人キングの十年を総決算する全米百万部の傑作短篇集。

■感想
表題作でもある「第四解剖室」は、恐ろしすぎる。有能な証券マンであるハワードは、ゴルフ中に突然倒れてしまう。ストレッチャーで運び込まれている途中で意識を取り戻すが、声をだすこともできないし体を動かすこともできない。

ハワードの対応をするのは新米の医者と教育係と思われた女医。このふたりが楽しそうに会話をしながらハワードを解剖しようとする。目の前のハワードはしっかり意識があるのに、何もできない。この恐怖は想像以上だろう。ハワードが終始悪態をついているのが印象的だ。

「エルーリアの修道女」は「暗黒の塔」のローランドの物語となっている。シリーズを読んでいればより楽しめるのだろうが、読んでいないとしても問題はないだろう。ローランドが行く先で負傷し、ローランドを助けた修道女たちには実は大きな秘密があった。

なんだか昔話にあるような展開だ。自分を助けてくれた心優しいおばあさんが実は鬼婆で自分を食べようとしていた。そんな感じでローランドは修道女たちから手当てを受けていたはずなのだが…。グロテスクな展開が目白押しだ。

短編集なのでサラリと読めるのだが、個性的な短編が多い。印象的で読みやすいのは間違いなく「第四解剖室」だ。ホラーとしての恐ろしさと理不尽な状況に対するなんとも言えない抗議の連続というのが良いのだろう。ガンスリンガーであるローランドの外伝的な物語については、シリーズを読んでいれば間違いなく楽しめるだろう。

キャラクターとしてローランドが確立されているだけに、余計な説明なく物語をすすめることができるのはよいのかもしれない。

キングの短編としては読みやすい部類だろう。



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