舞台 


 2018.4.14      ダメ男のニューヨーク一人旅 【舞台】

                     
舞台 (講談社文庫) [ 西 加奈子 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
父親に厳しく育てられてきた葉太は初めての一人旅にニューヨークへ行く。初日に盗難にあい無一文となってしまう。今まで流されて生活してきた男が、ニューヨークで無一文となり、どのような行動にでるのか。葉太の甘ったれ具合はすさまじい。

すぐに大使館へ行くのではなく、ダラダラと嫌なことは先延ばしにしようとする。その結果、日々の食事にも苦労することになる。超絶な空腹状態から、ちょっとしたピザをとんでもないごちそうに感じたり。初日で食べたまずいブレックファーストセットを、よだれを垂らしながら食べたり。甘ったれた世間知らずの男がニューヨークで変わる。修羅場をくぐることで、人は変わっていくのだろう。

■ストーリー
29歳の葉太はある目的のためにニューヨークを訪れる。初めての一人旅、初めての海外に、ガイドブックを暗記して臨んだ葉太だったが、滞在初日で盗難に遭い、無一文に。虚栄心と羞恥心に縛られた葉太は、助けを求めることすらできないまま、マンハッタンを彷徨う羽目に……。決死の街歩きを経て、葉太が目にした衝撃的な光景とは――。

■感想
葉太は初めての海外としてニューヨークを選ぶ。ガイドブックを暗記し、不安にさいなまれながらもニューヨークへ到着する。12ドルもするブレックファーストセットを食べ、必要に迫るコーヒーのおかわりを避けながらニューヨークへ挑む。

葉太は厳しい父親に育てられたことで、プライドは高いが、人の顔色をうかがうような人物へと成長していた。恥をかくことを嫌がり、さも旅慣れているような振る舞いをする。このあたりの葉太の気持ちはよくわかる。自分も旅先では葉太に近いような行動をとってしまうかもしれない。

ニューヨークでバックを掏られる葉太。周りの外国人たちは、葉太を心配するのだが、葉太はそこで皆に注目されることを嫌い、さも当たり前のようにふるまう。バッグを掏られ日本語でもよいから大騒ぎするのが普通なはずが…。

ここまでくると、葉太の異常さが際立ってくる。自分の今の状況を冷静に分析してはいるが、何も打開策を考えていない。大使館で説明し、怒られるのを嫌う葉太。そして、面倒を避けたいと感じる葉太。この気持ちは分からなくもないが、さすがに極端すぎるだろう。

結局のところ、オチとしては母親に助けてもらい家に帰ることになる。金が無い状態で安いピザがこの上ないごちそうのように感じたり、どうしようもなくなると、見ず知らずの他人と英語でコミュニケーションをとってみたり。

環境が人を変えるというのはある。ただ、この葉太が旅を通して変わったとは思えない。得がたい経験をしたと思うが、葉太の性格が変わったとも思えない。旅先で、初心者と思われたくないと思う気持ちはよくわかるが、極端すぎる。

葉太の行動に共感はできるが、やりすぎだろう。



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