ブルックリンの八月 


 2021.11.29      息子が所属する野球チームの物語 【ブルックリンの八月】

                     
ブルックリンの八月 / スティーヴン・キング
評価:2
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■ヒトコト感想
スティーヴン・キングの短編集。今までのホラーのイメージからずいぶんと様変わりしている。ワトソンが活躍する物語やリトルリーグの活躍を描くノンフィクションなどがある。特に少年野球チームの短編は、自分の息子が参加しているということで、熱の入れようがすさまじい。基本的には野球をある程度知っていないと楽しめないだろう。

どこかでホラーの要素があるのでは?と思いながら読んだのだが、最後まで野球エッセイのようなトーンで終わっている。この流れが意外すぎたために、戸惑ってしまった。ワトソン博士の短編ともうひとつの探偵の短編については、ある程度オーソドックスな探偵小説となっている。作者のファンからすると意外な作品であることは間違いない。

■ストーリー
ワトスン博士が名推理をみせるホームズ譚。息子オーエンの所属する少年野球チームの活躍をいきいきと描くノンフィクション。そしてエベッツ・フィールドに躍動した、いにしえのブルックリン・ドジャースに思いを馳せる詩。“ホラーの帝王”にとどまらない、キングの多彩な側面を堪能できる6篇を収録。著者自身による解説つき。

■感想
「アムニー最後の事件」は、作者自身が自分の作品の中に入り込んでしまう物語だ。ちょっとホラーというか不思議な作品ではある。作者が自分の小説作品の内部に入り込み混乱するような作品は多数あるのだろう。

よくあるパターンの内容ではあるが、少しのホラーの要素を入れるとかなり変化があるというのがよくわかった。ワトソン博士が推理を見せる作品については、ホームズほどの冴えた推理ではないのだが、そこに至るまでのちょっと特殊なパターンというのが物語の面白さなのかもしれない。

スティーヴン・キングの息子であるオーエンが参加する少年野球チームの活躍を描いたノンフィクションは、正直言うとキングっぽくない。ノンフィクションで子供の野球の状況を読まされるというのはちょっと辛いかもしれない。

何か大きな波風が立つわけでもなく、ごく普通のリトルリーグに参加した少年たちの物語となっている。親目線での物語なので、少年内部での問題や人間関係について詳しく描かれることはない。野球の本場であるアメリカでは少年野球については両親がかなりのめりこんでいるというのがよくわかる。

キングと言えばホラーというイメージがある。そうでなくてもミステリアスな雰囲気があるのは前提となっているのだが、それら読者の予想を悪い意味で裏切った作品かもしれない。恐らくは売れる前に書かれた作品なのだろう。

この時期では自分が何を求められているのかわからないまま、気ままに書きたいものを書いているような感じだ。息子の野球チームをテーマとした作品を書こうなんてことは、なかなか思わない。そこに特別なドラマがない限りは普通はまともに成立しないだろう。

ちょっと特殊な短編集だ。



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