ブロードキャスト 


 2019.3.18      ラジオドラマで全国を目指す 【ブロードキャスト】

                     
ブロードキャスト [ 湊 かなえ ]
評価:3
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■ヒトコト感想
中学時代に陸上長距離に力をそそいだ町田が、怪我をしたことから陸上をあきらめ、放送部へと入る物語だ。作者が脚本作成の経験があることから、高校生のラジオドラマやドキュメンタリー作成がメインとされている。高校生たちがラジオドラマで全国を目指す。脚本として注意することや、ラジオドラマ独特の注意点など、テレビドラマとは違った難しさがある。

部活内部での3年と2年の対立や、脚本家を目指す同級生の存在。さらにはいじめ問題も絡んでくる。LINEやSNSでのいじめなど現代のいじめの特徴にもふれられている。印象的なのは、部活内部でのやりとりが、やけに大人だということだ。自分が高校生の時には、もっとガキっぽい考え方だったような気がした。

■ストーリー
町田圭祐は中学時代、陸上部に所属し、駅伝で全国大会を目指していたが、3年生の最後の県大会、わずかの差で出場を逃してしまう。その後、陸上の強豪校、青海学院高校に入学した圭祐だったが、ある理由から陸上部に入ることを諦め、同じ中学出身の正也から誘われてなんとなく放送部に入部することに。

陸上への未練を感じつつも、正也や同級生の咲楽、先輩女子たちの熱意に触れながら、その面白さに目覚めていく。目標はラジオドラマ部門で全国高校放送コンテストに参加することだったが、制作の方向性を巡って部内で対立が勃発してしまう。果たして圭祐は、新たな「夢」を見つけられるか―。

■感想
中学時代に陸上に熱中し燃え尽きた町田。冒頭では町田の中学最後の駅伝の様子が描かれている。エースを欠いた状態での全国への挑戦。様々な事情がありながら、結局全国には行けなかった。ここで町田が燃え尽きるのではなく、高校も陸上の名門へ進学するのだが…。その後、町田に悲劇がおとずれる。事故に合い足を骨折してしまう。

それまで熱中していたことを突然奪われると人はどうなるのだろうか。町田がまったく畑違いな放送部へ入部するまでの葛藤が描かれている。

放送部のイメージは、ただ校内放送を管理するだけかと思っていた。それが、高校の部活ともなるとドラマ作成やドキュメンタリーの作成などがあるらしい。高校生らしく、ラジオドラマに挑戦し全国を目指す。

もともと放送部として全国常連だった学校なだけに、全国に対するプレッシャーもある。熱血スポコンものとはいかないが、文化部で全国を目指すという熱さがある。文化部というとその大変さはスポーツとはまた違ったベクトルとなる。そして、人間関係も重要となる。

ラジオドラマのテーマには、現代のいじめの問題が含まれている。高校生がスマホを持つのが当たり前の時代。いじめの方法も変化している。SNSやLINEを使ったいじめだ。町田の同級生で部活仲間の女の子は、いじめのトラウマからスマホをもつことができなくなる。

より陰湿になるいじめの方法。それをラジオドラマを通して描きながら、部活内での人間関係の難しさも描かれている。文化部の経験はないのだが、運動系よりも人間関係の難しさはあるように感じた。

ラジオドラマでの全国大会があるとは知らなかった。



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