2020.7.18 英雄視された兵士のトラウマと葛藤【ビリー・リンの永遠の一日】
ビリー・リンの永遠の一日
評価:3
■ヒトコト感想
アメリカで戦争に参加する者と、それを傍観して勝手に英雄視する者との対比を描いている。主人公はビリーリン。中東で上官が瀕死の危機に陥っているところを、果敢に敵の真ん中に飛び出して上官を助けようとしたその姿が賞賛され英雄視される。とんとん拍子で周りから様々な話がまいこんでくる。ついには映画化まで…。
実際に死を目の前にして敵を殺すことの過酷さやトラウマが描かれている。ビリーは、自分の中では戦場に戻りたくはないと思いながらも、一緒に戦った仲間を見捨てることができない。周りの賞賛と実体験した者とのギャップはすさまじいのだろう。どれだけ周りが兵士の過酷さを分かったふりをしたとしても、兵士たちには何の慰めにもならない。
■ストーリー
2004年イラク戦争。味方を助けるため、危険を顧みずに飛び交う銃弾の中に身を投じたビリー・リン(ジョー・アルウィン)。その雄姿が偶然ニュースにとりあげられたことで国の英雄になった彼とチームは、一時帰国の間に全米凱旋ツアーに駆り出される。故郷の歓迎に再出兵をためらう気持ちが芽生えるビリーであったが、同時にその歓迎への疑念も生じる。そして、いよいよ戦地へ戻る前日、ツアー最大の目玉となる感謝祭のアメリカン・フットボールのハーフタイムイベントに迎えられたビリー。大歓声の中、彼は戦地を回想する…。
■感想
飛び交う銃弾の中、味方を助けるために飛び出したビリー。血まみれの味方をかばいつつ、目の前には銃をもった敵がいる。とっさに敵にとびかかり、ナイフで敵の首を切り裂く。それまで実践経験はほぼない新米兵士が、突如として目の前の敵にナイフを突き立てる。
その場は必死に相手を殺すことだけを考えるのだが…。ビリーの行動はたちまち賞賛され、英雄視される。アメリカに戻った際には、ビリーはヒーローとして凱旋することになるのだが…。ここでチームが見世物にされることに乗り気でないのが伝わってくる。
アメフトの試合のハーフタイムショーに駆り出されるチームたち。ビリーはヒーローだが、チームも同じくらい周りから賞賛される。ここで、周りと兵士たちとのギャップが強烈に描かれている。安全なアメリカ本土でただ映像でしか戦争のことを知らない周りの者たち。
実際に戦場に立つビリーたちは、周りに冷ややかな目を向ける。アメフトチームのオーナーが出資をしてビリーの活躍を映画化したいと言い始めるのだが…。報酬が少なすぎるとあっさりと却下してしまう。
ビリーは戦場に戻りたいのか、そうではないのか。作中ではビリーの揺れる心が頻繁に描かれている。姉から心療内科医を紹介され、診療を受ければすぐにでも内地の勤務に回してもらえるとアドバイスを受ける。ハーフタイムショーに参加するチアリーダーのひとりと良い関係となり、戦場に戻ってほしくないと懇願される。
ビリー自身も危険な場所へは戻りたくないと考えているのだが…。それでも、仲間が向かう戦場に同じように足を向けようとするビリー。この心境は最後までよくわからなかった。
アメリカの若き兵士の葛藤が伝わってきた。
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