2020.4.10 崖っぷちに追い込まれてからの作家デビュー 【べらぼうくん】
べらぼうくん [ 万城目 学 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
作者の半生を描いたエッセイ。主に大学受験の時期から作家としてデビューするまでが描かれている。浪人して京都大学へ入学した作者。作品のイメージどおり、のんびりとした性格のようだ。京都の地で同級生が高い志をもって学生生活を送る中で、おぼろげに小説家になることを夢見る。
本作でもっとも強烈なのは、社会人生活から無職になり、小説家を目指す部分だ。制限時間をもうけて小説家になるために小説を書き続ける。マンションを管理しながら小説を書き続ける。安全な方へと動く作者。無茶なことをしない作者がなぜ無職で創作活動をするにいたったのか。世間に不満を叫ぶでもない。ただ売れっ子作家がどのような活動を経て作家になったかがわかるエッセイ集だ。
■ストーリー
未来なんて誰にもわからないのだ。川べりを俯き歩く万城目青年は、いかにして作家としての芽を育てたか。万城目ワールドの誕生前夜を描く極上の青春記であり、静かに深く届けたい人生論ノート。
■感想
万城目学が自身の状況をエッセイとして赤裸々に語る。京都大学に入学できるので頭はよいのだろう。勉強もできたのだろう。ただ、俗にいう言うできる人というような印象はない。京都の地でのんびりと生活する。
どちらかと言えば、「森見登美彦」に似た雰囲気を感じてしまった。京都の地で学生として生活し、そこから就職活動を行うのだが…。ここでのんびりとした生活ゆえか、就職活動という行為に拒否感があるのか。就職活動に失敗してしまう。浪人の道を選んでからは、心機一転がんばるのだが…。
就職先は手堅い大手企業だ。それもワークライフバランスがよく、残業はない、金は貯まり創作活動に従事できる。まさに絶好の環境だ。大企業の経理マンとして静岡の地で生活する。もしかしたら、このまま経理として一生を終えるのもよいのかもしれない。
そこから静岡での安定した生活を捨て、小説家になるために会社を辞める決断をする。それまでの作者の生活を見ていると、とても博打をうつようなタイプには思えない。作中でも、そのあたり作者的には無謀な挑戦ではなく、ひとつのことにしか集中できないための決断とのことだ。
無職となってからの地獄の生活は強烈だ。社会人時代の貯金だけで生活する。2年限定といいながら、小説のコンテストに応募しても1次審査すら通らない。その状態となると、かなり精神的に追い込まれていくだろう。作者的には金銭感覚が百円と千円が同じ価値になるらしい。
追い込まれながらも、マンションの管理人としての面白おかしいエピソードがある。追い込まれた状態で最後の最後に、これがダメならば就職するという状態となり、結局1次審査にも通らない。絶体絶命の状態からどのように起死回生の一発をだせたのか…。
作家としてデビューするまでの強烈なエッセイだ。
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