弁護人


 2019.10.7      アカ狩りに反発した税務弁護士【弁護人】

                     
弁護人
評価:3.5

■ヒトコト感想
実際に起きた冤罪事件と戦った弁護士の物語。税務弁護士のソンがなじみの食堂の息子がアカとして国家保安法違反に問われる。この時代の韓国はまるで戦前の日本のように国家権力の横暴が続ていたのだろう。一度アカと認定されると拷問のかぎりを尽くされ自白を強要される。裁判の場でも検事や裁判官、そして味方であるはずの弁護士まで罪を争うのではなく有罪は認め量刑をいかに軽くするかで争うようだ。

ソンは実情を知り怒り狂う。ただ金を手に入れたいだけの税務弁護士が、あっという間に正義の弁護士に様変わりする。マスコミは国家の味方となりソンは反逆者のレッテルを貼られる。ソンの周りの協力者たちが次第にソンに感化されていく場面は興奮してくる。

■ストーリー
1980年代初めの釜山。学歴はないが、さまざまな案件を抱える売れっ子、税務弁護士ソン・ウソク(ソン・ガンホ)。大手企業からのスカウトを受け、全国区の弁護士デビューを目の前にし ていた。ある日、駆け出しの頃にお世話になったクッパ店の息子ジヌ(イム・シワン)が事件に巻き込まれ、裁判を控えているという情報を聞く。

クッパ店の店主スネ(キム・ヨンエ) の切実な訴えを無視出来ず、拘置所の面会にいくが、そこで待ち受けていたジヌの信じがたい姿に衝撃を受ける。軍事政権下、捏造された国家保安法違反による逮捕者が続出する中、多 くの弁護士が引き受けようとしない事件の弁護をウソクは請け負うと決めるが…。

■感想
学歴はないがアイデアと図々しさで稼ぐ税務弁護士のソン。序盤はソンがいろいろなことをやりながら、周りに嫌味を言われながらも生きる場面が描かれている。税務弁護士として名刺を配りまくった結果、金を稼ぐことができ、社員を入れ事務所も立ち上げる。

とんとん拍子に進むソンの勢い。それを象徴するように大手企業の顧問弁護士の話がくるのだが…。ソンはダメな弁護士かもしれないが、プライドを捨てアイデアをだし、自分が稼ぐ道を見つけ出している。この逞しさはすばらしい。

ソンが学生時代に食い逃げした食堂に恩返しにいく場面がある。小金を持つようになったソンは恩返しのために頻繁にその食堂に通う。家族も裕福な暮らしができ、社員も幸せ、家まで買ったソンなのだが…。ここで食堂の息子がアカ狩りにあい、警察に監禁されてしまう。

この時代の韓国はなんでもかんでも怪しい者はすべてアカとして逮捕していたのだろう。ただ読書会を開いていただけの息子は捕まり拷問を受け、やってもいないことを自白させられることになる。

税務弁護士でしかないソンは食堂の息子の実情を知り奮起する。世論の反発は強く、契約間近であった大手企業との弁護士契約も破棄される。それでもソンは息子の冤罪を晴らすために奮闘する。

マスコミも政府に都合のよいことしか書かない。裁判官も検察の言いなりとなる。この困難な状況であってもソンはたった一人で戦い続ける。ついには多数の協力者を得ることで、冤罪事件が世に明らかとなる。裁判を妨害する警察組織。拷問の証人がでてきたとしても、握りつぶしてしまう。民主主義の欠片もない裁判の状況だ。

本作が実話を元にしていることに驚いた。



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