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 2020.9.4      ブッシュ政権の黒幕チェイニー【バイス】

                     
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評価:3.5

■ヒトコト感想
チェイニー副大統領を描いた作品。クリスチャン・ベールがチェイニーの若いころから晩年までを演じている。驚きなのはその再現具合だ。似ても似つかない容姿かと思いきや、最終的にはチェイニーそのものになっている。ラムズフェルドに師事し、そこからトントン拍子に出世していく。最終的にはブッシュ政権の副大統領にまでなるのだが…。

ここでもチェイニーがブッシュをお飾りとして政権を裏で牛耳っているような描かれ方がされている。イラク戦争などを扇動したとも描かれており、これが真実であればかなり問題なのだろう。裏ですべてを操る男。大統領の権限を法的な解釈として最大限に利用する。強烈なインパクトがあるのは間違いない。本作を見て、チェイニーが訴えたりしないか心配になるほどの内容だ。

■ストーリー
1960年代半ば、酒癖の悪い青年チェイニーがのちに妻となる恋人リンに尻を叩かれ、政界への道を志す。型破りな下院議員ドナルド・ラムズフェルドのもとで政治の表と裏を学んだチェイニーは、次第に魔力的な権力の虜になっていく。大統領首席補佐官、国防長官の職を経て、ジョージ・W・ブッシュ政権の副大統領に就任した彼は、いよいよ入念な準備のもとに?影の大統領?として振る舞い始める。

2001年9月11日の同時多発テロ事件ではブッシュを差し置いて危機対応にあたり、あの悪名高きイラク戦争へと国を導いていく。法をねじ曲げることも、国民への情報操作もすべて意のままに。こうしてチェイニーは幽霊のように自らの存在感を消したまま、その後のアメリカと世界の歴史を根こそぎ塗りかえてしまったのだ。

■感想
チェイニーが副大統領としてブッシュ政権でどんな仕事をしていたのかは知らなかった。本作では、チェイニーは最初はただの酒癖の悪い青年であったが、政界へ進出しラムズフェルドと出会うことで、大きく変化していく。政治の裏と表を学び、権力を手にすることで、権力の魅力にとらわれてしまう。

クリスチャン・ベールがチェイニーを演じているのだが…。若いころはまだクリスチャン・ベールの面影はあるのだが後半になるとハゲで太ったメガネをかけたおやじなので、まったく元の面影がない。この変身っぷりはすさまじい。

ブッシュが大統領選に出馬する際に、チェイニーに副大統領の打診がくる。ここでチェイニーは権力を得ることを考え、ブッシュをお飾りの大統領にしようとする。ここまであからさまな描かれ方をすると、ブッシュ政権はすべてチェイニーが裏で牛耳っていたという印象となる。

チェイニーは法律を拡大解釈し大統領にすべての権限があるようにする。そして、大統領に入る情報はすべて秘密裏にチェイニーに渡るようにする。無茶苦茶な権力志向だ。本作の描かれ方では、イラク戦争の責任はブッシュではなくチェイニーにあるように思えてしまう。

チェイニーは存在感を消した状態ですべてをコントロールしている。のちにパウエル国務長官が後悔していたりと、今になって様々な情報がでてくる。すでに過去のことかもしれないが、アメリカにとっては黒歴史であることは間違いない。

これほどあからさまにチェイニーの悪事を描いていると、ブッシュがかわいそうになってくる。出来の悪いおぼっちゃまが周りに担ぎ上げられ、いつの間にか大統領になっている。全てをチェイニーに操られながら、歴史の汚点はブッシュの責任となる。とんでもない男だ。

チェイニーがブッシュ政権の黒幕だと、本作を見て初めて知った。



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