2021.3.31 真珠湾攻撃の思い出を胸にハワイへ 【青空の休暇】
青空の休暇
評価:3
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■ヒトコト感想
戦争を経験した75歳の周作と、戦友の早瀬、栗城と共にハワイで衝撃的な出会いをする物語だ。周作たちは真珠湾攻撃で爆撃機に乗り込み戦艦アリゾナを爆撃した経験をもつ。平和になった現代で、息子世代との感覚の違いに困惑し、3人はハワイへと旅立つ。そこで真珠湾攻撃で不時着した爆撃機を発見する。
序盤ではハワイを爆撃した張本人たちが、ハワイで兵士として戦った者やアリゾナの乗組員と会う。お互い、戦時中での行いに対して個人を責めるつもりはない。それでも、緊迫した雰囲気が伝わってくる。不時着した爆撃機を修理し飛ばそうとする。周作の妻は周作の浮気を疑い自殺していた。衝撃的な真実が次々と明らかとなり、物語は最後のラストへとつながる。
■ストーリー
七十五歳になる周作は、真珠湾攻撃から五十年の節目に、戦友の早瀬、栗城とともにハワイへ向かった。終わらない青春を抱えて生きる男。その男を生涯愛しぬいた女の死。人生の輝かしい一瞬を求めて、男ははばたく。感動の長編小説。
■感想
妻が自殺し息子家族たちとも折り合いが悪い周作。典型的な頑固おやじで、下手に体を鍛えているだけに若い者にも負けずに暴力的になる。まさに扱いづらい老人ということなのだろう。そんな周作と戦友の早瀬と栗城の3人でハワイへ突然旅行することになる。
それは、自分たちが攻撃した真珠湾を見るためだった。戦争中とはいえ、自分たちが攻撃した戦争の相手がそこにいる。最初は素性を隠していた周作たちも、現地のガイドや元兵士たちと交流することで正体を明らかにする。戦争で戦った相手を目の前にするというのは、どういった気持になるのだろうと想像してしまった。
終わらない青春。ハワイに行くことで周作たちは当時の思い出を語りだす。ただ、平行して習作の死んだ妻が残した手紙の内容が語られる。周作は非常に頑固で融通の利かない男だというのがわかる。ただ、内心妻のことを愛していても、そのことを口にだすことはない。
飲み屋の女将と浮気を疑われたとしても、無駄な釈明はしない。昔ながらの考え方なので、息子世代や妻には理解できなかったのだろう。戦友の早瀬や栗城でさえ周作の頑固っぷりには辟易しているそぶりさえある。
ハワイでは真珠湾攻撃当時、不時着した爆撃機がそのままの形で残っていたと判明する。現地の日系人が隠してメンテをしていた。周作たちはその爆撃機を再び大空へはばたかせるために修理をするのだが…。単純な老人たちの青春を思い出す物語ではない。
時代の変化についていけない老人。それと共に、現地のガイドが再婚相手に振り回されるなど、日本人の女だけが我慢しなければならない現状が描かれている。死期を悟った早瀬が言いだしたハワイ旅行。ラストはすべてを清算するためのものなのだろう。
中盤まではハワイに住む日系人と周作たち日本人の会合の緊迫感が伝わってきた。
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