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　2019.9.16 　　 　　騒音計測者の心の不安定さ　【アンチノイズ】

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アンチノイズ / 辻 仁成 / 新潮社 [単行本]
評価：2.5
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■ヒトコト感想
公務員として騒音測定の仕事をするぼく。恋人のフミとの関係は冷めきっている。ぼくが求めてもフミはつれない態度をとる。そして、フミの留守番電話を盗み聞きし、フミが浮気しているのではないかと疑いをもつぼく。ぼくはフミに冷たくされたことからフミに対して屈折した思いをいだくようになる。

衝動的にテレクラで知り合ったマリコと関係をもつ。実はマリコはテレクラ嬢であり、ぼくともあとくされない関係を続けている。音がポイントとなる本作。ただ、人間同士の関係の中では音というよりも、盗聴ということで関係が崩れていく。うっすらと感じた雰囲気というのは、突き詰めて調べようとしてもよいことはない。フミが別れたがっていると感じたのなら、そっとしておくべきだったのだろう。

■ストーリー
ぼくは騒音測定の仕事をしている。恋人のフミとは同棲中だけど、最近はキスも拒まれてうまくいってない。それでテレクラ嬢のマリコとよく会っている。見えない音をかたちに表す“音の地図”作りが趣味だ。そんなある日ぼくはふとした盗聴をきっかけにフミを疑い始めてしまった―。聞こえているのに聞き分けられない、愛しているのにつかまえられない。都会に潜む声と恋を追い求める長編。

■感想
フミとの同棲生活で、しっくりと来ていない感覚をもちながら日々騒音測定の生活を続けるぼく。ぼくの生活は普通だが、騒音測定の仕事をきっかけとして、趣味で音の地図を作り上げるまでになっている。どの範囲まで鐘の音が聞こえるのか。まさに仕事がきっかけとして趣味が生まれるパターンだ。

なんとなくだが、今であればWEBサービスとしてどこが騒音が大きいかというのを地図上に表示するのもよいのかもしれない。それなりにインパクトがあるのは間違いないだろう。

ぼくはテレクラ嬢と知り合いとなる。ひょんなことからテレクラ嬢のマリコと関係をもつ。恋人同士ではなくお互いあとくされのない肉体関係。ぼくの同級生とマリコが関係を結んでいたとしても、そのことで怒ることはない。

ぼく自身もマリコに対してはフミという恋人がいることを伝えている。非常に歪な関係だ。恋人との関係は冷めきっているが、あきらめているわけではない。浮気をしているがマリコと付き合うつもりはない。ぼくの心の中ではフミと昔のような親密な関係になりたいと願っている。

ぼくはフミに対して最近の態度の冷たさや、フミが密かに連絡をとっている相手について語っている。そこでフミは開き直りの言葉を口にする。ぼくが考える心配事はまさにそのとおりの現実となる。盗聴してまでもフミとの関係を修復しようとしたのだが…。

マリコとの関係が進展するわけでもなく、ただ単にぼくがフミに振られることになる。騒音測定をしていることが、その後のプライベートの関係にどのような影響を及ぼすのか。ぼくが異常な心理状態に陥っているのを感じてしまった。

ぼくの心の不安定さを感じる作品だ。