2019.5.13 顔を整形した妻に気づくか?【あの日のように抱きしめて】
あの日のように抱きしめて [ ニーナ・ホス ]
評価:3
■ヒトコト感想
強制収容所から生還したネリーが、顔を整形し夫と再会する物語だ。顔に大怪我を負ったネリーは整形し夫であるジョニーと再会する。支援者からは、ジョニーが書類上はネリーと離婚したと知らされる。それでも、ネリーは別人のふりをしてジョニーに会いに行く。
ジョニーはネリーとは知らず、ネリーとそっくりな女として保険金を得ようと画策する。物語のポイントは、ジョニーがネリーに気づかないことだ。ジョニーの中では、ネリーは死んだものとして考えられている。ジョニーはネリーのことを妻と思い出すことができるのか。ネリーのジョニーに対する思いが、最後の場面ですべて崩壊する。悲しい結末ではあるが、ある意味、予想できた流れだ。
■ストーリー
1945年6月、ベルリン。第二次大戦でのドイツ降伏の翌月、元歌手でユダヤ人のネリーは、顔に大怪我を負いながらも強制収容所から奇跡的に生還。過去を取り戻したい彼女は、元の顔に戻すことに固執。顔の傷が癒える頃、ついに夫ジョニーと再会したネリー。しかし、容貌の変わった彼女に夫は全く気付かない。そのうえ、“収容所で亡くなった妻になりすまし、遺産を山分けしよう”と話を持ちかけるジョニー…。
■感想
ネリーは大けがをした顔を整形する際に、どんな顔にするか医者に尋ねられる。それに対してネリーは、元の自分の顔が良いと言う。自分の顔に戻すリスクがあることを理解しながら、それでも自分の顔に戻そうとするのは、夫ジョニーのことがあるからだ。
ネリーが悲しいのは、ジョニーがネリーを裏切ったということを、最後まで信じようとしなかったことだ。支援者からジョニーがすでにネリーを死んだ者として扱い、離婚されているということを聞かされても、ネリーの思いが変わることはない。
ネリーがジョニーと再会するのだが、ジョニーはネリーとは気づかない。ネリーのそっくりさんとして、ネリーのフリをさせて保険金をだまし取ろうとする。ネリーは複雑な心境だろう。自分のフリをする。そして、目の前の夫は自分のことを気づかない。
ネリーは当然ながらネリーのフリをするのはうまい。筆跡までも完璧に模写したとジョニーに思わせる。そして、遂に故郷に帰るのだが…。この場面が衝撃だ。ネリー以外は皆、ジョニーとネリーがすでに離婚していることを知っているため、複雑な表情をしている。
故郷の仲間の前で、ネリーはあえて歌を歌おうとジョニーに問いかける。その場面で初めて、ジョニーはネリーが生きており、今、目の前にいるのがネリーだと気づく。その後、ネリーがその場を後にする。非常に衝撃的な場面だ。その他の仲間たちの複雑な表情と、ネリーの表情はリンクしている。
ジョニーだけがピアノを弾きながら、その歌声でネリーだと気づく。最後のダメ押しとして、ネリーの腕には強制収容所の囚人の入れ墨が彫られている。ジョニーの表情が全てを物語っている。
悲しい結末だ。
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