あなたへ


 2019.5.3      寡黙な男のロードムービー【あなたへ】

                     
あなたへ [ 高倉健 ]
評価:3

■ヒトコト感想
刑務官の倉島が、死んだ妻の遺骨を海に撒くために富山から長崎へ向かう。実直な男である倉島。車を改造し車中泊をしながら長崎へ向かう。哀愁漂うロードムービーだ。行く先々で様々な人と出会う。みな何か事情がある。倉島が寡黙であるが他者を思いやる良い男だ。倉島と妻の関係や、刑務官としての仕事。そして、出会う人々との交流。

ロードムービーとしては、ひたすら落ち着いた雰囲気を醸し出している。大きな出来事が起きるわけではない。旅をする上で倉島は妻との思い出を回想する。妻の遺骨を海に撒きすべてが終わる。強烈なインパクトはないのだが、落ち着いた面白さがある。人生に疲れた人が見ると、新たな希望を見出せるのかもしれない。

■ストーリー
北陸のある刑務所の指導技官・倉島英二のもとに、ある日、亡き妻・洋子が残した2枚の絵手紙が届く。そこには、1羽のスズメの絵とともに“故郷の海を訪れ、散骨して欲しい"との想いが記されていた。そして、もう1枚は、洋子の故郷・長崎県平戸市の郵便局への“局留め郵便"だった。その受け取り期限まで、あと10日。刑務所に歌手として慰問にきていた洋子とは穏やかで幸せな夫婦生活を営んでいた。長く連れ添った妻とはお互いを理解し合えていたと思っていたのだが、妻はなぜ生前その想いを伝えてくれなかったのか・・・。

妻の真意を知るため、彼女の故郷を訪れることを心に決める。妻の故郷を目指すなかで出会う多くの人々。彼らと心を通わせ、彼らの家族や夫婦の悩みや想いに触れていくうちに蘇る、洋子との心温かくも何気ない日常の記憶の数々。さまざまな人生に触れ、さまざまな想いを胸に目的の地に辿り着いた英二は、遺言に従い散骨する。そのとき、彼に届いた妻の本当の想いとは―。

■感想
妻を亡くした倉島は、妻の遺言どおり遺骨を長崎へ散骨するため旅にでる。旅先で出会うのは様々な事情を抱えた者たちだ。キャンピングカーで旅をする元中学教師は、倉島のことを気にかけてくれたのだが、実は車上荒らしの常習犯だった。その他に、バッテリーが上がって困っていた者をたすけ、そのまま大阪で実演販売の手伝いをしたり。

倉島の人の好さが強烈にアピールされている。人に頼まれると嫌とは言えない性格の倉島。明るくふるまう人も、実は裏で苦しい悩みを抱えているというのもポイントだ。

倉島の目的地である長崎。そこに至るまでには様々な出会いがあり、そこでの出会いから船での散骨の手助けになったりもする。道中で知り合った南原という男は、長崎の漁船の男だった。家族を捨てて逃げたことに倉島が気づき、結婚する娘の写真を南原に見せるなど、ほっこりする場面もある。

合間に挿入される倉島と妻の思い出。実直で無口な倉島だけに、どのような思いで妻と過ごしてきたのかはわからない。何か妻に伝えきれない思いがあったのだろうことはわかる。

出演者が豪華だ。ちょい役にすら超有名人がでている。主人公の倉島役である高倉健の演技に引っ張られるように、周りの俳優たちの演技がすばらしいもののように思えてくる。寡黙な中にも、雰囲気だけで相手に強く伝える何かがある。

刑務官としての厳しい表情はすばらしい。受刑者たちと協力して神輿を作り、それを試しに担いだりするシーンは、なんだかわからないが涙がでそうになる。強烈なインパクトはないのだが、倉島のキャラクターには思わず見入ってしまう。

寡黙な高倉健が全てだ。



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