オール・アバウト・マイ・マザー


 2021.12.6      母親になれない男たち【オール・アバウト・マイ・マザー】

                     
オール・アバウト・マイ・マザー [ アントニア・サン・フアン ]
評価:3

■ヒトコト感想
一人息子を交通事故で亡くしたマヌエラ。序盤ではマヌエラ自身が臓器移植のコーディネータなので、息子が事故死した際の臓器移植の葛藤が描かれるのかと思いきやそうではない。マヌエラの周りには性転換し男から女になった者が多数いる。実は息子の父親は性転換し女になっていた。

マヌエラは息子が慕っていた有名女優の付き人になったりもする。マヌエラを中心として物語は進んでいくのだが、エイズ感染が判明した妊婦や、薬物におぼれる女優などが登場してくる。印象的なのは、マヌエラの息子と妊婦のお腹の中の子供の父親が同じ人物という部分だ。それも女に性転換している。母親になれない女たちという描かれ方をしているのだが…。ちょっと特殊な物語であることは間違いない。

■ストーリー
マヌエラは一人息子のエステバンを溺愛するシングルマザー。しかし不慮の事故で大切な息子を失ってしまう。喪失感の中、いつか息子に話そうと思っていた父親のことが頭をよぎる。愛する息子のため、そして自分自身の人生ともう一度向き合うため、マヌエラはかつての夫を探す旅に出る─。

■感想
仲の良い親子のマヌエラとエステバン。シングルマザーのマヌエラだが、幸せな生活を送っていた。それが、エステバンの事故死によりマヌエラの人生は大きく変化していく。男から女へ性転換した昔の友人を頼り、新たな生活を目指すマヌエラ。

エステバンが熱狂していた女優の付き人になるマヌエラ。出演者のひとりが薬物中毒となり舞台へ出れないとわかると、急遽マヌエラが演技をしたりもする。過去に演技をかじっていたとはいえ、突然の緊急登板を行うことには驚きしかない。

マヌエラの知り合いのひとりに、妊婦の女性がいる。妊娠した子供の父親は、マヌエラの夫と同じ男だった。その男は性転換し女性となっていた。衝撃的なのは妊婦がエイズに感染しており、まさにエイズを感染させたのはマヌエラの夫だった。

生まれた子供にもエイズが感染していたが、発症はまだしていない。複雑な状況ではあるが、死んだ妊婦の代わりにマヌエラが子供の面倒をみることになる。そして、別れた夫と再会する。この場面は強烈だ。女となった元夫を見るのはどのような気分なのだろうか。。。

物語全般として性転換した女の苦しい心情が語られている。外向きには明るく振る舞ってはいるのだが、男からも女からも蔑視されているような雰囲気がある。特に妊婦の母親は、すべてにおいて保守的で、エイズに感染した孫と一緒に住むことを拒否したりもする。

臓器移植の物語となるかと思いきや、性転換した男と女の物語となっている。母親になれなかった男たちの苦悩とでもいうのだろうか。有名女優はマヌエラの息子が自分にサインをもらおうとして事故死したことを知りショックを受ける。

なんだか妙に複雑な人間関係のある物語だ。



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