2021.12.12 往復書簡の中には重大なウソがある 【愛をください】
愛をください / 辻仁成
評価:3
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■ヒトコト感想
李理香と基次郎の往復書簡が描かれた物語。養護施設で育った李理香は突然送られてきた基次郎の手紙により癒されていく。施設でのイジメや仕事の問題、不倫関係などの悩みを手紙で基次郎に伝えることで、李理香は心が開けていく。基次郎はまるでカウンセラーのように李理香の悩みを聞き、適切な答えを導き出す。
李理香の実の父親が登場した際の、李理香が父親に会うことの後押しをしたりもする。李理香の悩みだけでなく基次郎の恋愛の悩みも語られている。決して会わないと約束したふたりだが、李理香は我慢できずに基次郎のもとへ会いにいくのだが、そこで衝撃的な事実が判明する。基次郎には秘密があり、その秘密をきっかけとして衝撃的な事実が次々と明らかになっていく。
■ストーリー
もう君は一人じゃない―。児童養護施設で成長し、自殺未遂を繰り返す十八歳の李理香のもとに見知らぬ男性から突然届いた一通の手紙。自らも同じ境遇だと明かす手紙の主・基次郎が綴る素直な文面に、李理香も次第に心を開くようになる。しかし、二人には意外な運命が待っていた。テレビドラマでも話題になった、往復書簡が織り成す純粋な「愛」の物語。
■感想
李理香と基次郎の往復書簡は、最初は李理香の悩みが中心として語られている。保育園で仕事をする李理香は園児の父親と不倫関係になってしまう。そのことを詳細に手紙で語る李理香。そして、基次郎は李理香に対してアドバイスする。
基次郎は厳しい言葉を告げるわけでもなく、李理香に対して自分の心に素直になれという。李理香は児童養護施設で育ったため、自分の父親の幻想を追い元めているのだろう。それがエスカレートしたことが不倫へと繋がっていったのだろう。
基次郎と李理香は決して会わないと決めて文通を続けている。そんな中で基次郎に恋人ができたことを知る李理香。基次郎の恋人はALSを発症しており、次第に体中の筋肉が萎縮していく状態となっている。基次郎の恋人にどのように接してよいかという苦悩が描かれている。
将来、基次郎と結婚できた、という言葉を恋人の母親がつぶやいた時、恋人が暴れただとか、非常に心にくる内容となっている。この時点では李理香も基次郎も何も隠すことのないハードな内容を手紙でやり取りしている。
基次郎の手紙が途切れた時、李理香は約束を破り基次郎に会いに行ってしまう。ここで衝撃的な事実が判明する。実はALSを発症していたのは基次郎だった。体がだんだんと動かなくなる中で、必死に李理香に手紙を書いていた。
この衝撃的事実を李理香は信じることができず、読者も何かしら別のどんでん返しがあるのでは?と思わずにいられなくなる。そこから、基次郎の母親にすべての真実を知らされる李理香。ここでさらにもうひとつの衝撃的な事実が明らかとなる。
ラストの怒涛の展開はすさまじい。
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