2019.8.31 愛はプライドより強いのか? 【愛はプライドより強く】
愛はプライドより強く (幻冬舎文庫) [ 辻仁成 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
ナナとナオトの物語。お互い音楽メーカーに就職し仕事をバリバリこなしていたが、ナオトが小説を書くために仕事を辞める。同棲を続ける中で、小説が書けないナオトと仕事をバリバリこなすナナの間がギクシャクしてくる。タイトルにあるように、プライドについて語られている。主にナオト目線だが、男はあちこちにしょうもないプライドをもっている。
恋人にそのしょうもないプライドを傷つけられると、激怒する。誰もが経験することかもしれない。女は男がプライドが高いことを知りながら、プライドを傷つけることもある。愛とプライド、どちらを優先するのか。つい、男は一時的にプライドを優先する場合がある。そうなると後には後悔しか残らない。
■ストーリー
ナナは、「愛している」と、たったひとこと打ち明けるのに、二年もかかったナオトのことを、もう忘れてしまったわけではなかった。しかし、日数なんて問題じゃない、と言いきった鉅鹿の言葉とあの突き刺すようなまっすぐな視線は、それ以上にナナの心を揺さぶりつづけている。迷う男と迷わない女たちへ。愛をとるか。プライドをとるか。
■感想
音楽のディレクターとしてバリバリ働くナナ。同棲しているナオトは小説が書けずに悩み苦しむ。ナナは華やかな世界でひたすら輝き続ける。ナオトは苦しみの中で、どうにか殻を破ろうと必死になる。男のプライドというのは様々なものがある。金を稼ぐこと、仕事でバリバリと働くことなどなど。
ナナのヒモ状態のナオトからすると、小説が書けないことがナオトのすべてのプライドをズタズタに引き裂くのと同じなのだろう。ナナとナオトのカップルだけでなく、世間には同じような立場の男は少なくないだろう。
バリバリ働くナナは仕事関係の仲間と浮気する。そして、ナオトも新たな出会いがある。お互いが浮気をしてはいるが、最後に帰るのはお互いの場所だ。ナナは小説が書けないナオトに対して微妙な思いをいだきつつ生活している。
ナオトもナナに対する罪悪感がありながら、浮気をする。本作に登場してくるキャラクターたちはどこか心が病んでいる。ナオトの浮気相手は、ナオトに極度に依存する状態となり、その結果、自殺するとナオトに連絡してくる。ナオトはその対応を他者に任せたばかりに、悲しい結末となる。
ナナがナオトに対して浮気相手を経由し別れを告げる。これほどナオトにとって辛いことはないだろう。浮気相手からナナが泣いていることを告げられる。自分がそれほど重荷になっていたのか。ふたりの未来を考える描写はないのだが、間違いなく明るい未来ではないだろう。
ナオトが例え小説で成功したとしても、また別の問題が発生してくるだろう。ナナにもプライドがあり、ナオトにもプライドがある。お互いのプライドを傷つけあいながらするのが同棲なのだろう。
誰もが感じることのできる状況だ。
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