2021.3.22 国をあげた登頂合戦【アイガー北壁】
アイガー北壁 [ベンノ・フュルマン]
評価:3
■ヒトコト感想
実話にもとづいた作品。アイガー北壁に対しての初登頂を各国が争う中で、ドイツ人の登山家トニーが仲間と共に初登頂に挑む。初登頂ということに価値があり、国を上げて盛り上げている。そのため、登頂者に対しては強いプレッシャーがかかる状態となっている。
トニーたちのすぐ下ではオーストリアの登山隊が近づいている。雪山登山の過酷な状況がこれでもかと描かれている。仲間が大けがを負ったことから登頂中止を決断する。そこから下山するまでも一筋縄ではいかない。強烈なのは、途中で動けなくなり救助を待つ状態であり、すぐ近くまで救助隊がきているのだが、激しい吹雪のため助けることができない。アイガー北壁へチャレンジした男たちの苦悩が描かれている。
■ストーリー
1936年の夏。ナチス政権は、いまだ達成されていないアイガー北壁登攀を国威発揚の為に利用する計画を立てる。白羽の矢が立ったのは2人の若きドイツ人登山家トニー・クルツ(ベンノ・フュルマン)とアンドレアス・ヒンターシュトイサー(フロリアン・ルーカス)。登山家としてのチャレンジ精神と成功への野心が2人をアイガー北壁に向かわせる。しかし、そこには想像を絶する困難が待ち受けていた。
■感想
ドイツの山岳隊であるトニーとアンディはアイガー北壁へとチャレンジするため訓練するのだが…。世間の盛り上がりに戸惑いつつも、国を上げてのアイガー北壁初登頂の期待がヒシヒシと伝わってくる。トニーの恋人は新聞記者としてトニーを取材するのだが…。
登頂することになり、ドイツ隊のトニーとアンディ。オーストリア隊の二人がすぐ後ろをついてきている。ここで国を上げての初登頂を目指すことの盛り上がりと実際に登山している者たちとの意識の差がでてくる。
オーストリア隊は大怪我を負い、これ以上登れなくなる。登頂目前となりこれ以上登れないと判断したトニーは中止を決断する。それまでの周りの盛り上がりを知っているだけに相当辛い決断なのだろう。メンバーの命を第一に考えてのことなのだが…。
中止がキャンプに伝えられ、恋人は少しだけ安心する。この気持ちはよくわかる。周りの期待に背中を押され、到底無理な状態であっても無理して登山を続け死ぬ場合も多々あるのだろう。中止は英断なのだが…。
下山もすんなりとはいかない。急激な悪天候と雪崩によりトニーひとりが生き残る。アンディがトニーだけでも生還させるために命綱を切る場面は衝撃的だ。残されたトニーにしてもザイルが絡まり動くことができない。
救助隊がすぐそこまで来てはいるが、悪天候で近づくことができない。恋人からすると心が張り裂けそうな状況だろう。すぐ目の前には恋人がいる。ただ、近づくことができない。本作が実話をもとに描かれていることに衝撃をうけた。
救助隊の目の前で力尽きるのは悲しすぎる。
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