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 2022.1.19      アイは数学のiを意味している 【i】

                     
i [ 西加奈子 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
あるひとりの少女を中心とした物語。現実に起きた様々な悲惨な事件を例にもちだし、それに心を痛める主人公のアイ。親友がレズビアンであったり、自分に恋人ができたことであったり、ちょっと特殊な悩みを感じてしまう。アイの心の叫びというのは、世界の情勢に大きく影響されている。アイは愛する人ができ、そこからどのようにして変化していくのか。

親友とどのように変化していくのか。ひとりの少女が世界の情勢、テロで数多くの人々が死ぬことに心を痛める。それと同じレベルで、自分の周りの問題に苦心する。アイはまるで作者の西加奈子のように思えてくる。世界の情勢に目が行くのは、ある意味女子高生としては特殊な状況なのだろう。

■ストーリー
「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる、ある「奇跡」が起こるまでは…。西加奈子の渾身の「叫び」に心ゆさぶられる傑作長編。

■感想
アイの親友は女性が好きで、アイにもそのことをカミングアウトしている。そして、その親友は、恋人がいるにも関わらず、そこで男と関係をもったりもする。相手の女性からすると、同じく同姓が好きだという思いがある。

浮気だけでも許せないのに相手が男というのはかなり強烈な怒りとなっている。アイの周りの特殊さは普通ではない。アイはどのようにして心の平穏を保つのか。テレビを見れば、海外でテロや内戦で多くの人々が死んでいる。そのことに心を痛めるのは辛い。

アイは恋をし、そして妊娠する。アイが不妊治療の病院へ訪れる場面は強烈だ。周りの患者たちは激しく子供を求めている。そのために辛く苦しい治療を続ける。そんな場所に小さな子供がいるというのは、確かに心のストレスとしては大きいのだろう。

病院内に子供を連れてくることに配慮するというのは、それなりにインパクトのある張り紙だ。アイがその後流産をする。そんな状況でありながら親友は男と浮気をし、妊娠し子供をおろそうとしていると知ると、激怒するのは当然だろう。

数学に興味をもつアイ。iというのが数学にかかるのがなんともおしゃれだ。虚数やマイナスの考え方など、数学を研究することに心血をそそぐアイ。数学に興味をもつきっかけの特殊さと、そこから様々な人生経験を経てからのアイが作り上げられている。

作者の特殊な経験がいかされているのだろうか。養子として迎えられた両親の元で育ったアイ。本当の親子ではないことが、アイの心の中では最後までわだかまりとして残ることになる。

アイの強烈な人生が描かれている。



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