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　2019.4.7 　　 　　SNSの「いいね」中毒となった者たち　【七つの試練　池袋ウェストゲートパーク１４】

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七つの試練 池袋ウエストゲートパーク14 [ 石田 衣良 ]
評価：3
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■ヒトコト感想
シリーズの定番として、最新の時事ネタを扱っている。SNSや芸能人のスキャンダルなど、どこかのニュースで見たようなネタが短編として描かれている。そして、いつものＧボーイズが大活躍し最後を締める。パターンは決まっているのだが、安定した面白さがある。

マコトは八百屋で仕事をしながら、タカシから依頼をうけてトラブルを解決していく。SNSを使った事件では、まさに現実にありそうな事件が描かれている。世間ではSNSの「いいね」中毒になっている。「いいね」を得るためにはなんでもする。それがエスカレートすると…。芸能人のスキャンダル絡みは、ひとつ失敗すると仕事を失うだけでなく、多大な損害賠償を請求される危険性がある。時事ネタを扱っているので新鮮味がある。

■ストーリー
SNSで課題をクリアして「いいね」を獲得するゲームが若者に流行。次第にエスカレートする課題に「いいね」欲しさに挑み、ある者は大怪我を、ある者は命を落とすという事態に……。怪我した高校生の妹と共に卑劣なゲームの管理人をあぶりだそうとするマコトとタカシが仕掛けた大掛かりなトラップとは。スキャンダル一発ですべてを失う芸能人、お手軽な欲望が横行する出会いカフェ、病んだ身内をひた隠しにする親族監禁――

どこか現実の事件を思わせる事件を、池袋のトラブルシューター、マコトとGボーイズを率いるキング、タカシが軽やかに解決する4篇を収録。

■感想
「泥だらけの星」は、若手の人気俳優がスキャンダルにより恐喝される物語だ。週刊誌に写真を持ち込まれるか、永遠に恐喝されるか。トラブルシューターとして、マコトとＧボーイズが対応するのだが…。最初からＧボーイズで恐喝の仕返しをすればあっさりと終わりそうな気もしたのだが…、

物語は若手俳優の葛藤も盛り込まれている。３Ｐした写真が流出する時点で、脇が甘いのは確かだ。そこから、たとえ週刊誌に写真を持ち込まれたとしても、そこから自らの実力で這い上がるという気概をもつ俳優が変わっていく物語だ。

「幽霊ペントハウス」は、高層マンションの幽霊騒ぎから始まり、オチは親族による監禁事件へとつながる。高層マンションでの幽霊騒ぎの部分でも、様々な要素が詰め込まれている。セレブな若者や美しい妻が実はスピリチュアルに傾倒しているなど、どこか不自然な部分があり様々なオチが想像できる流れとなっている。

幽霊騒ぎが本物なのか、別の意図があるのか。オチとしては、近隣に異常な家族がいて、精神に異常をきたした娘を監禁していたというオチだ。どこかで聞いたことのある事件だ。

「七つの試練」は、ＳＮＳを使った「いいね」中毒を描いた作品だ。「いいね」を得るために七つの試練を実行していく。エスカレートしていく試練。ただ、難易度の高い試練を突破していくと「いいね」は増えていく。

なぜ危険な試練に挑戦するのか。「いいね」を得たからと言って、金がもらえたりするわけではない。単純な承認欲求を満たすためだけに、人は「いいね」を得ようとしている。ある種異常なことだが、その「いいね」中毒の極端な形が本作になるのだろう。

時事ネタをスピーディに取り入れているのがすばらしい。