油断大敵


 2017.6.18      背中と表情で語る俳優たち 【油断大敵】

                     
油断大敵 【DVD】
評価:3

■ヒトコト感想
新任の刑事と大泥棒のネコのなんとも言えない心温まる交流が描かれている。偶然、空き巣のプロであるネコを捕まえた新任刑事の仁。オドオドしながら刑事には向いていないと思われた仁が、ネコにさまざまな盗みのノウハウを伝授され、いつの間にか泥棒刑事の専門化となる。ネコと仁の関係が秀逸だ。ネコがまるで仁を育てるように様々な教訓を与える。

成長した仁は、出所したネコと対決することになる…。仁の娘との関係もまた物語のカギとなる。娘のためを思い再婚せず親子ふたりで生活してきた仁。成長した娘が海外へ羽ばたこうとすることに怒りを覚える。それぞれの立場で口にする言葉が最高だ。そして、最後に仁の糠床を混ぜる姿で終わる。哀愁ただよう男の背中だ。

■ストーリー
駐在所勤務から刑事として新任地に転勤した仁(役所広司)は、大泥棒の通称“ネコ”(柄本明)を捕まえるという大手柄をたてる。そして仁はネコからあらゆる泥棒の手口を教わり、一流の刑事に育っていく。

■感想
大泥棒のネコが飄々としていて良い。偶然仁に捕まえられはしたが、ベテラン泥棒として一筋縄ではいかない。ベテラン刑事が事情聴取しても吐かないネコ。それが、仁にだけペラペラと泥棒の手口を話す。そこからネコの痔を直したり、仁が周りの刑事から認められたりと変化がでてくる。

ネコが服役すると、今度は仁と娘との関係がクローズアップされる。娘は小さいが、仁が再婚しようとすることに拒否反応を示す。それを目の当たりにした仁は再婚を諦めることになる。

仁が泥棒専門の凄腕刑事へと成長し、娘も大きくなる。親子ふたりの生活に変化がでてくる。それと共に、ネコは出所しまた泥棒を再開する。そこで再びネコと仁の追いかけっこが始まる。ネコを逮捕できるのは仁だけ。そして、またまた仁がネコの逮捕に成功するのだが…。

凄腕刑事に成長した仁はネコに遊ばれることはない。ネコの過去を探りだし、ネコのウィークポイントを突いてネコを自白させる。そこには、仁と娘の関係も大きく影響している。仁の渋い表情とネコの表情が秀逸だ。

出演者の演技がすばらしい。特にネコはその表情だけで仁をおちょくっているのがわかり、何かを思いだし感動しているのがわかる。仁にしても、娘が羽ばたこうとするのを許した後、娘がお別れを言う場面で、なんとも言えない表情がすばらしい。

あっさりとしたお別れの最後に、仁は娘から引き継いだ糠床を混ぜる。仁の背中に向かって娘が言葉をかける。一瞬、仁の糠床を混ぜる手が止まり、その後、また同じリズムで糠床を混ぜ始める。仁の背中がすべてを語っている。

俳優の演技が素晴らしい物語を作り上げている。



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