ようこそ、わが家へ 池井戸潤


 2015.2.25      誰にでも起こりうる日常の恐怖 【ようこそ、わが家へ】

                     
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■ヒトコト感想

真面目でごく普通のサラリーマンが恐怖の日常を過ごす。駅のホームで割り込みを注意した男から逆恨みされ、家にまでつけられ嫌がらせをされる。こちらは相手の素性を何も知らない。誰にでも起きうる恐怖だ。ちょっとしたトラブルが重大事件に発展する典型かもしれない。見ず知らずの男からストーキングされた倉田は、家族と共に対策をねる。

プライベートでのトラブルとは別に、倉田は仕事でもトラブルを抱えている。銀行から出向先の電子部品会社で不正を発見してしまう。作者得意の経理絡みでの不正を暴くパターンだ。相変わらず作者のキャラは仕返しが徹底している。プライドを傷つけられた仕返しはすさまじい。

■ストーリー

真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。さらに、車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。

執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから窮地へと追い込まれていく。

■感想
平凡なサラリーマンがある日突然、見ず知らずの他人から悪意ある攻撃を受ける。相手の素性がわからないだけに恐ろしい。家まで知られ、家族に被害がおよぶ可能性があるのは恐ろしすぎる。警察も頼りにならず、ちょっとした被害が頻発する状況であれば、自分たちで何とかするしかない。

倉田たち家族がとった行動は、かなり積極的にストーカーを排除しようとしている。非常に危険な行動もいとわない。そこまで時間と労力をかけるのはバカバカしいと思うが、目の前に危機が迫っているという実感があるからだろう。

倉田は勤務先で営業部長の不正を発見してしまう。作者が得意な経理関係の不正の話だ。明らかにおかしな行動をする営業部長に証拠を突きつけて追い詰めるが、最後の最後には言い訳され逃げられてしまう倉田。

不正と人間関係のはざまに立たされた倉田の苦悩が描かれている。さらには、銀行で出世の目のない者が出向させられる辛さも描かれている。銀行員としてのプライドを捨て、中小企業の総務部長として社会人生活を全うするべきなのか。倉田の苦悩はプライベートだけではない。

営業部長にやり込められ、名無しの人物に嫌がらせを受ける倉田。それらに対して倉田の積極的な行動により、強烈な天罰が下ることになる。作者の作品では、不正や悪事をはたらく者には、必ず最後に強烈なしっぺ返しが待っている。

不正をはたらく営業部長を追い込む鮮やかな手並みは、読んでいて気持ちがすっきりする。嫌がらせを繰り返した人物を探り当てる過程はドキドキする。悪が許される世界はない、と断言するかのように、悪にはかなり強烈な結末が待っている。

日常のトラブルというのは、他人事ではないかもしれない。



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