横道世之介


 2015.5.5      ウザいが憎めない男 【横道世之介】

                     


■ヒトコト感想

長崎生まれの純朴な青年が、大学進学のために都会にでて青春を謳歌する物語。純粋だが図々しい、それでいて憎めない男、世之介。まず最初に感じたのは、時代は違うが大学に入学したてのワクワクした感じを思いだしてしまった。80年代の大学生の、今見るとちょっと奇抜でヘンテコなファッションも良い。世之介の髪型が変なのも愛嬌がある。

世之介の友達も曲者ぞろいだ。同級生と付き合い、妊娠させ学校を辞めてしまう友達や、女に興味を持てないイケメンの加藤など、世之介の周りは個性的な面々がそろう。何より世之介のガールフレンドであるお嬢様の祥子が最高だ。ちょっとズレた感覚を持つ祥子。変わり者の世之介以上に特殊な祥子と世之介のぎこちない恋愛が面白い。

■ストーリー

長崎県の港町で生まれた横道世之介(よこみちよのすけ)は、大学進学のために状況したばかりの18歳。嫌味のない図々しさを持ち、頼み事を断りきれないお人好しの世之介は、周囲の人たちを惹きつける。お嬢様育ちのガールフレンド・与謝野祥子をはじめ、入学式で出会った倉持一平、パーティガールの片瀬千春、女性に興味を持てない同級生の加藤雄介など、世之介と彼に関わった人たちとは1987年の青春時代を過ごす。

■感想
田舎者の世之介が大学進学のため東京に出てくる。知り合いがいない状態での大学生活がスタートするドキドキ感を思わず思い出してしまった。入学式で隣に座ったやつとの何気ない会話。同級生の女の子とのちょっとした交流。そして、サークルの勧誘活動でもみくちゃにされる。

不安とワクワクがないまぜとなった心境は、この時期しか味わえないものだろう。80年代ということで、服装が古臭いのも、時代は違うがノスタルジックな気持ちにさせられる。強烈に大学生のころに戻りたいなぁ、という気持ちにさせられた。

世之介の友達たちは、世之介に負けず劣らず個性的だ。入学式で隣となり、すぐに友達となった男は、同級生を妊娠させ結婚し大学を辞めてしまう。図々しい世之介のことを、ウザイと感じながらもいつのまにか部屋に居候させることになった加藤。イケメンで女子人気抜群の加藤が、実は男が好きだったり…。

世之介の近辺では普通のことでも、ちょっと特殊な状況になりえる。加藤がセッティングしたダブルデートで出会ったお嬢様の祥子は強烈だ。世間知らずゆえに、ガンガン世之介との距離を縮めていく。同じく図々しい世之介が引くほどなので、相当なのだろう。

80年代の青春物語。同じ世代を経験した人が見ると、懐かしすぎて泣けてくるかもしれない。出てくる小道具にもこだわりがあるようで、昔見たことがあるような古臭いポスターなど見ると、懐かしさがこみあげてくる。特に、長崎での海水浴の描写は強烈だ。

今では化石的な価値がありそうな古臭い車と、笑いが出てきそうな女性たちの水着。自分がイメージする青春とは少し違うが、この古さが良いように思えてくる。物語として大きな事件があるわけでもない。ただ、世之介の青春を描いているだけだが、妙に引き付けられる魅力が世之介にはある。

世之介の、何を考えているかわからないあの表情に引き付けられるのだろうか。



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