予告犯


 2017.5.21      命を賭ける価値はある 【予告犯】

                     
映画「予告犯」豪華版 【Blu-ray】 [ 生田斗真 ]
評価:3.5

■ヒトコト感想
原作は未読。ネットを駆使した動画による予告犯罪。ニコニコ動画による盛り上がりや、リアルタイム映像での臨場感。それらが予告犯罪と相まって、ネット住人を中心に大盛り上がりする。サスペンスなので犯人グループは判明しており、犯行の動機もうっすらと見えてくる。派遣切りや非正規雇用の悲劇というべきか、時代を反映しているのだろう。

強烈なのは、やはりラストの展開だ。それまで派遣の苦労や世間への鬱憤を晴らすために、調子にのっている人物に制裁を加えていたと思われていた。それが実は真の目的は別にあった。まさに「そのために?」という感想をもつだろう。ただ、どんな小さなことでも命を賭ける価値がその人にはある、という伏線が事前に張られていた。

■ストーリー
新聞紙の頭巾を被り、ネット上に現れた“シンブンシ”と名乗る「彼」は、法では裁かれず、見過ごされがちな罪を犯した者たちを暴露しては制裁を繰り返す。

■感想
ネット上に現れた新聞紙を被った男。予告しそれを実行する。かなり奇妙だが、実際に予告どおりに実行されるとなるとネット住人たちは大いに盛り上がる。予告が実行されるとリアルタイムに動画が配信される。罪に問われないが、悪事を働くものたちへの制裁なのか、それとも…。

ネット民たちにとっては「めしうま」な状態だろう。ただ、法治国家として、警察はシンブンシの存在を許すことはできない。政治家をターゲットにしてから、より捜査の目が厳しくなるのは当然だろう。

犯人たちは早目に明らかとなる。派遣切りや非正規雇用の悲劇。割とありきたりで世間では当たり前にあることだろう。夢も希望もなくなった者たちが、世間への反抗で予告犯としてネット上に現れたのかと思いきや…。単純な愉快犯なのか、自己顕示欲なのか。

後半までは、その動機がはっきりしない。警察と予告犯たちの騙し騙されの展開は面白い。警察が常に裏をかかれ、予告犯たちを取り逃がすのは爽快だ。そして、予告犯たちの不幸な境遇もまた同情に値するかもしれない。

ラストでは真の目的が語られるのだが…。作中で刑事がつぶやくように「そんなことのために?」というのがほとんどの人の感想だろう。もっとうまいやり方があったのでは?と思わずにはいられない。仲間たちを助けるために、仲間たちを巻き込まないために、仲間の願いをかなえるために。

警察が最後まで右往左往し無様に思える反面、予告犯たちがそこまで実行力や技術力があるのならば、その能力をもっと別のことに活かせば?と思わずにいられない。

真の目的がわかった時は、すさまじい衝撃がある。


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