わたし出すわ


 2015.8.8      金を出し続ける女 【わたし出すわ】

                     


■ヒトコト感想

東京から故郷の北海道に帰ってきた摩耶は、様々な理由で金に困っている高校の同級生たちに「私、出すわ」と金を援助する。金に執着する人と、金への執着が薄い人とふたパターンのキャラクターが登場してくる。なぜそれほど摩耶は金を持っているのか?という疑問はつきまとうが、そんなことは関係ないと後半に気づくことになる。

金をどれだけ有効に使えるか。金に支配されおかしな方向へ進む者もいる。単純に考えると、金がありすぎて困るなんてことはない。あればあるほどうれしいはずが、そうではない人もいる。金に執着がないキャラクターを見ると、つい尊敬してしまう。気持ち的には理解できるが、現実問題として金への執着を無くすのは難しいだろう。

■ストーリー

山吹摩耶が突然、故郷の函館に帰ってきた。東京でどう稼いだのか莫大な財を築いている。高校卒業以来何も変わっていない街で、久々に高校の同級生たちと再会する摩耶。そして彼らの「夢」や「希望」の実現のために、次々に「わたし、出すわ。」と自分のお金を差し出していく。

友人たちは戸惑いながらも、ついそのお金を受け取ってしまうのだった。果たして摩耶の資金の出所は? 彼女の目的とは? そして大金を受け取った友人たちの夢の行く末は…? 「わたし出すわ」のその先に、それぞれの未来が見えてくる。

■感想
「わたし出すわ」という言葉と共に、大金を惜しみなく提供してくれる女性・摩耶。東京で何があったのか、そして、どのようにして大金を手にしたかは謎のまま。困っている同級生たちへ金を援助しつづける。同級生たちの夢の実現のため、金をだす。

摩耶にとっては大金を大金と思わない悟りを開いたような雰囲気がある。受け取る同級生たちにも問題はあるのだろうが、なんだか金の価値がおかしくなりそうな雰囲気すらある。ある意味、あぶく銭を手に入れた同級生たちの中には、おかしな道へ足を踏み入れる者もいる。

摩耶から援助された者たちの中で、大金を手に入れたために不幸になる人もいる。金は人を狂わすというのがよくわかる。摩耶から金を受け取りさえしなければ、つつましくも平凡な人生を送れていたはずが、人生が大きく変わってしまう。

摩耶からしても悪気があるわけではない。ふと、自分だったらどうなるのか?考えてしまう。今すぐに大金が必要というのはないが、あって損はない。ただ、人生を壊すほどに暴走するかというと…。突然大金を手にしたことがないのでわからない。

作中には摩耶以外にも金に執着のない者がいる。それらの者たちは、決して裕福ではないが、平凡な暮らしをしている。突然金を手に入れたとしても、平凡な暮らしを変えようとはしない。良い家に住み、良い車に乗り、着飾るということを考えない。

身の丈にあった生活をする。正直、この部分には驚かずにはいられない。今、自分の平凡な生活は大金を払ても手に入らない。逆に大金を手にして生活を変えたことにより起こりうる不幸の方が辛いのだろう。かなり衝撃を受けてしまった。

有り余るほど金はなくとも、平凡な暮らしが一番だと思ってしまった。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp