裏切りのサーカス


 2017.5.31      緊迫感あふれるオジサンたち 【裏切りのサーカス】

                     
裏切りのサーカス [ ゲイリー・オールドマン ]
評価:3.5

■ヒトコト感想
冷戦の最中のイギリスとソ連の情報戦を描いた作品。英国諜報部をサーカスと呼び、幹部たちをコードネームで呼ぶ。サーカスの幹部の中に裏切り者がいる。裏切り者の存在により、作戦が失敗し指揮する者が引退させられ死ぬことになる。裏切り者を見つけ出すのは、引退した幹部であるスマイリーだ。選りすぐりの仲間を従え、裏切り者(モグラ)を見つけ出そうとする。

激しいアクションがあるわけではない。じっくりと調査を続けながら、外堀を埋めるようにモグラをあぶりだしていく。5人の幹部の中で誰がモグラなのか。回想を交えながらスマイリーが怪しい人物を絞り込んでいく。調査の過程にすさまじい緊迫感がある。一歩間違えれば死が待つ世界。調査する方も命がけだ。

■ストーリー
東西冷戦下、英国情報局秘密情報部MI6とソ連国家保安委員会KGBは熾烈な情報戦を繰り広げていた。 ある策略により、英国諜報部<サーカス>を去ることとなった老スパイ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)の元に、困難な任務が下される。 それは、長年に渡り組織の幹部に潜り込んでいるソ連の二重スパイ<もぐら>を捜し出すこと。

標的は組織幹部の4人、<ティンカー(鋳掛け屋)、テイラー(仕立屋)、ソルジャー(兵隊)、プアマン(貧乏人)>。 過去の記録を遡り、証言を集め、容疑者を洗いあげていくスマイリー。浮かび上がるソ連の深部情報ソース<ウィッチクラフト>、そしてかつての宿敵、ソ連のスパイ<カーラ>の影。やがて彼が見いだす意外な裏切者の正体とは―。

■感想
サーカス内部にモグラがいる。まずこのコードネームでの呼び合いが痺れる。指揮するコントロールにスマイリー、プアマン、ソルジャー、テイラー、ティンカー。どれもが一筋縄ではいかない怪しげな風貌をしている。そして、誰もが怪しいが決定的な証拠がない。

コントロールが失脚した作戦の実行者は、殺されたかと思いきや実は生きてイギリスに戻っていた。この二転三転、裏の裏の裏をかくような展開が良い。はたしてこの人物は敵なのか味方なのか。謎は強烈に深まっていく。

コントロールの右腕であったスマイリー自身も、実はコントロールにモグラではないかと疑われていた。自身の妻が不倫しており、精神的な苦悩にさいなまれても、ひたすらモグラを探すことに心血を注ぐスマイリー。仲間と共に危険な目にあいながらも、モグラのヒントをつかみ取っていく。

出演者たちが非常に渋い。演技派というか、渋さが画面からにじみ出ている。主要人物はほぼすべてオジサンだ。初老と言っても良いぐらいの人物たちばかりだ。だからこそ激しいアクションはないが、強烈な緊迫感が生まれてくる。

二重スパイの結末は、なんとなく想像できる流れとなっている。それなりに伏線が張られており、気づく人は気づくかもしれない。ただ、結末が分かったとしても衝撃度は変わらない。さらに言うなら、モグラが判明した後が、なんとも切ない流れとなっている。

モグラの末路としてはやむを得ないことなのだろう。そして、二重スパイにより人生をめちゃくちゃにされた者の怒りが待っている。冷戦時代の情報戦の激しさは、そのまま諜報活動に関わる者たちの生死に関わってくる。

コードネームが強烈に印象に残っている。



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