アンダーカバー 秘密調査 真保裕一


 2015.2.9      イメージはホリエモンだ 【アンダーカバー 秘密調査】

                     

■ヒトコト感想

若きカリスマ企業家が逮捕されすべてを失う。本作の主人公である戸鹿野は、間違いなく元ライブドアのホリエモンをイメージしているのだろう。フィリピンで薬物疑惑をかけられ逮捕され、会社はつぶれてしまう。資産を没収され、すべてを失った戸鹿野が自分を罠にはめた人物を探し出そうとする。

戸鹿野がフィリピンの刑務所に入り、そこで成り上がる部分は面白い。裸一貫からやり直す根性もすばらしい。戸鹿野のパートとは別に、ユーロポールのジャッドが麻薬捜査を行うパートがあり、二つの繋がりは結末間近までまったく感じられない。最終的には、世界を又にかけた麻薬取引事件となり、非常に壮大で複雑な物語だ。

■ストーリー

戸鹿野智貴、28歳。若きカリスマ経営者と言われる彼は、女と旅行に行った異国の地で、薬物密輸の疑いで逮捕される。会社は破綻、資産は没収。なぜ自分ははめられたのか?事件の真相を探るべく、彼は名前も顔も変えて調査に乗り出す。一方、イギリスで麻薬捜査を手がけるジャッド・ウォーカーは、ユーロポールへの出向を命じられ、イタリアでマフィア幹部の惨殺事件に遭遇する。さらに第二の事件が…。

■感想
異国の地で薬物疑惑をかけられ逮捕される。IT企業のカリスマ経営者である戸鹿野は会社と資産をすべて失うことになる。まずこの戸鹿野のパートは強烈だ。身に覚えなのない麻薬がバッグに入っていただけで容疑者となり収監される。

収監されてから戸鹿野自身の能力で、刑務所内で金を稼ぎ地位を築いていくたくましさがすばらしい。没落するまではホリエモン的印象だったが、刑務所で成り上がる姿は、サバイバルに長けたたくましい男というイメージだ。

戸鹿野のパートとは別にユーロポールのジャッドのパートがある。イギリスでの麻薬捜査がメインなのだが、その範囲はトルコからヨーロッパ全土、そしてアメリカへとつながっていく。戸鹿野との繋がりはまったくなく、関係のない二つの出来事がすすんでいるといった感じだ。

中盤以降も、戸鹿野とジャッドの繋がりは見えてこない。戸鹿野が自分を罠にはめた人物を突き止めかけたとき、やっとジャッドと戸鹿野の繋がりがかすかに見えるといった感じだ。

非常に回りくどいというか複雑というか、シンプルに戸鹿野が罠にはめられた原因を探るはずが、壮大な物語となっている。これを喜ぶのか複雑と感じるのか…。正直、もっとシンプルでも良かったのではないかと思えた。戸鹿野が調査する過程で、次々と人の繋がりから新たな人物がでてくる。その繋がりも特別衝撃的なものではない。

戸鹿野を罠にはめることは、壮大な計画の一部かもしれないが、そこまでやるか?というのが正直な感想だ。戸鹿野を罠にはめなくても、計画はすすんでいくような気がしてならない。

世界を又にかけた麻薬事件の複雑さを描いた作品だ。



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