ツナグ


 2017.7.1      一生に一度だけ死者と会える 【ツナグ】

                     
ツナグ [ 松坂桃李 ]
評価:2.5

■ヒトコト感想
人生で一度だけ死者と会えるとしたら、誰に会いたいか。小説作品の映画化だが原作は未読。ツナグが使者として様々な人を死者に会わせる。ツナグのルーツや、どのようにしてツナグと連絡をとるかなど、細かい部分はあいまいなまま物語は進んでいる。メインは死者と会いたい人のエピソードなのだろう。

死者に会いたいと考えた時、みな決まって「謝りたい」だとか「理由を聞きたい」というのがある。ある意味生きている者の自己満足なのかもしれない。ツナグへ連絡したとしても、死者側にも拒否権がある。本作ではすべてのパターンで死者は依頼を受けている。感動させようとしているのだろうが、イマイチ物語に深く入り込むことができなかった。

■ストーリー
たった一人と一度だけ、死者との再会を叶えてくれる人がいるらしい-。半信半疑で依頼をしてくる人たちの前に現れる使者は、ごく普通の高校生・歩美(松坂桃李)だった。横柄な態度で、癌で亡くなった母・ツル(八千草薫)に会うことを希望する中年男性・畠田(遠藤憲一)。喧嘩別れをしたまま自転車事故で死んでしまった親友・御園(大野いと)に聞きたいことがある女子高生・嵐(橋本愛)。プロポーズ直後に突然失踪した恋人・キラリ(桐谷美玲)のことを信じて待ち続けているサラリーマン・土谷(佐藤隆太)。

歩美は、実は“ツナグ"を祖母のアイ子(樹木希林)から引き継ぐ途中の見習いで、その過程で様々な疑問を抱く。死者との再会を望むなんて、生者の傲慢かもしれない。間違いかもしれない。果たして会いたかった死者に会うことで、生きている人たちは救われるのか。人生は変わるのだろうか。そして死者は…。 その疑問は、自身の両親の不可解な死の真相へも向けられていく―。

■感想
ツナグの力で死者と面会ができる。人生でひとりとだけ会える。死者側としても1度だけ生者と会える。死者に会いたいと思う人は、それなりに理由がある。ごく普通の高校生の歩美が、死者と生者を繋ぐ。どのようにして死者と出会うのかは語られていない。

そしてツナグである歩美に連絡する方法も明確ではない。本作ではそのあたりの下世話な話はなく、単純に死者と会いたい者たちに、どのような物語があるのかが描かれている。亡くなった母親の思いを知るオヤジ。同級生の急な死を悲しみ話をしたがる女子高生など、状況は様々だ。

サラリーマン土谷の物語は強烈だ。偶然出会ったキラリと恋人同士となる。キラリの本名が不明のまま一緒に生活し婚約までするのだが、その後キラリが行方不明となる。そこから、7年の歳月を経て土谷はツナグにキラリと会わせてくれと頼む。

つまり、キラリがもうすでに死んでいるという前提の依頼となる。自分の婚約者が何者かわからず、突然失踪したとなると、どのようにしてよいのかわからないだろう。ツナグを通じて会えるのは良いことなのか、悪いことなのか。

それぞれのエピソードは、感動を呼び起こすような流れとなっている。死者と会えることがすでに感動のいち要因となっている。生きている人が救われるための自己満足というのもあるのかもしれない。通常ならば、死者に対して罪悪感をもったままその後生活する必要がある。

自分が許されるために死者に話を聞くというのがある。そして、本作では死者と会ったすべての人たちが、救われるという結末になっている。ツナグである歩美の両親の秘密が、最後の最後で明かされるのも衝撃的だ。

感情移入できるエピソードがあれば、感動できるだろう。



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