とっぴんぱらりの風太郎 上  


 2017.4.26      何も知らされない下忍の悲哀 【とっぴんぱらりの風太郎 上】

                     
とっぴんぱらりの風太郎 上 [ 万城目 学 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
豊臣の時代。伊賀を追い出された忍びの風太郎の物語。忍者養成機関である柘植屋敷の生き残りとして忍者の仕事をバリバリと行うはずが、不運が重なり伊賀を追い出されることになる。冒頭から忍者である風太郎が、頭を使って難所を乗り越えるタイプだと描かれている。そうは言っても忍者なので一般人よりは腕がたつ。

忍者としての風太郎が上の者たちの様々な思惑に翻弄され、わけがわからないまま大きな事件に巻き込まれる。物語のポイントとしては瓢箪だ。ひょんなことから瓢箪と関わり合いができ、瓢箪の仙人のような人物に様々な依頼をされる。豊臣から徳川へ時代が変わろうとする時、末端の忍者である風太郎が自分の命第一に働き続ける物語だ。

■ストーリー
天下は豊臣から徳川へ。度重なる不運の末、あえなく伊賀を追い出され、京でぼんくらな日々を送る“ニート忍者”風太郎。その運命は一個の「ひょうたん」との出会いを経て、大きくうねり始める。時代の波に呑みこまれる風太郎の行く先に漂う、ふたたびの戦乱の気配。めくるめく奇想の忍び絵巻は、大坂の陣へと突入する!

■感想
風太郎の忍びとしての腕前はどの程度なのか。同期の者たちには腕を見込まれており、上司にもそれなりに気に入られている。それでも、不運が重なるとあっという間に伊賀を追い出されてしまう。忍びの仕事を奪われた風太郎だが、ひょんなことから瓢箪を育て始める。

ここで奇妙な瓢箪の仙人のような人物と出会うことになる。これが物語全体にどのような意味をもたらすのか、上巻ではまったく繋がりがない。下巻では風太郎の忍びとしての仕事に、瓢箪が大きな意味をもつことは確実だろう。

忍びとして命を賭けて命令をまっとうするタイプではない。戦いを好まず口先や頭を使って逃れられるなら逃れたいタイプだ。そのため、凄腕の傾奇者が登場すると、いかにして戦わずにすむかを考え続ける。自分の命が危機にさらされると、例え仲間でもあっさりとおいて逃げるタイプだ。

ただ、汚いとかいやしいキャラクターではない。忍びとして生き延びることが第一という強い考えをもっており、無駄な殺生を好まないタイプなため、どこか好感がもてるキャラクターとなっている。

後半では豊臣と徳川の戦に巻き込まれ、戦いに挑むことになる。ここでもいち忍者の力など無いに等しく、鉄砲で撃たれたり、矢で射られれば死んでしまう。いつ戦が始まり、いつ戦が終わるかはわからない。上の人同士の話し合いが下々に伝わるはずもなく、下忍はただ言われたことを何も考えずに遂行するしかない。

このあたり、マンガや映画などでは無双する忍者だが、実際の戦では、ひとりの忍者の働きで大きく戦局を変えるなんてことがないと描かれている。すべては兵士の数で決まるのが戦だ。

張り巡らされた伏線が回収されるであろう下巻が楽しみだ。



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