扉のかたちをした闇  


 2017.5.15      詩を理解するのは難しい 【扉のかたちをした闇】

                     
扉のかたちをした闇 [ 江國 香織 ]
評価:2
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■ヒトコト感想
江國香織と森雪之丞の連詩。月ごとにテーマを決めて江國香織から詩を描き、それを受けて森雪之丞が詩を返す。正直言うと、詩の良さというのはよくわからない。少ない文字の中でどれだけ想像力を膨らませて頭の中に物語を作り上げるのか。詩についての感想はすごく難しい。作者が思い描いたものがそのまま読者に伝わるとは限らない。

そのため、何が言いたいのかよくわからない詩もあった。月ごとにその詩についてのイメージは江國香織が描いた詩に、森雪之丞が寄せているのだろう。似通った詩となっているが、男女の違いなのか異なる印象がある。詩ひとつとっても、かなり違う印象を持つ。かといって、他者の詩をどんどん読んでみたいとは思わない。

■ストーリー
「男のひとは 愛に疲れやすいので 愛に倦まない女たちは 自作自演で愛に溢れる」(江國香織) 「女のひとは 愛をむさぼり生きるので 愛を産めない男たちは 夢を耕して愛を補う」(森雪之丞)1年12か月をテーマにそれぞれが書いた詩、江國香織が書いた詩を受けて、森雪之丞が書いた連詩、絵画作品をモチーフにそれぞれが書いた詩の3部構成。ニューヨークと東京で語り合う往復書簡も収載。

■感想
月ごとに詩を描く。江國香織と森雪之丞がそれぞれの思いを詩にする。詩の読み方というのを、そもそもわかっていないので、詩をどのようにして読めば良いのかわからない。目で文字を追いその意味を考えはするのだが、そこに物語性があるようでよくわからない。

小説に比べると圧倒的に少ない文字数なので、よけいなことはいっさい書かれていない。そのため、もはやほとんどを頭の中で勝手に想像するしかない。中には共感できる一言がある。それでも、大多数は特別な印象もなく、言葉が流れて行ってしまうような感じだ。

連詩の形をとっているので、江國香織が描いた詩に対する森雪之丞の詩がある。必然的に森雪之丞の詩は江國香織の作品に寄せることになる。男と女で日々の何気ないことに対するとらえ方の違いや、考え方の違いがあらわれているので、そのあたりは面白いかもしれない。

どちらかと言うと、森雪之丞の詩の方が、詩として読みやすく意味もはっきりと想像できた気がした。これが作者の性別の違いなのか、自分の相性の問題なのか。ただ、どちらの詩も特別心に強く突き刺さるようなことはなかった。

その他、NYでやりとりした往復書簡などが収録されている。どちらも手書きの文字が特徴的ではあるが、丁寧に書かれており非常に読みやすい。イメージとして、作家はかなり達筆というか、うまいを通りこして読みづらいという印象があったのだが…。

本作がどの程度一般人に受け入れられているのか不明だ。詩の需要は小説よりもさらに少ないだろう。小説でさえわかりやすい作品が好まれる現代においては、詩はかなりハードルが高いのは間違いないだろう。

詩を理解するのは難しい。



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