2017.1.3 なんともいえない後味の悪さ 【ザ・ゲーム】
■ヒトコト感想
複数の物語が複雑に絡みあうたぐいの作品。ギャンブル依存症の小説家や売れない手品師、マフィアに脅迫される配管工などが裏社会の帝王アイヴァンをキーワードにして繋がっていく。序盤では繋がりは見えてこず、それぞれの悲惨な生活ばかりがクローズアップされる。借金に追われる者や栄光を夢見る者。それらの者たちがチャンスをつかみかけた時、思わぬ落とし穴がまっている。
ある意味、自業自得の部分が目につく者たちばかりだ。借金をギャンブルで帳消しにしようとする者。そして、八百長試合を弟にもちかける者。どうにもできない状況を打破するために、楽な方法を選ぶ。結果、不幸な結末を迎えたとしても、それは自業自得以外のなにものでもない。
■ストーリー
小説家のキャロリン(キム・ベイシンガー)は、新作が書けない日々を送っていた。苛立ちからギャンブル依存症になり、愛する夫(レイ・リオッタ)に、娘の大学進学資金まで手を出してしまったことを言えずにいた。貯金を元に戻そうと、栄光をふたたび夢見る手品師ウォルター(ダニー・デビート)と手を組み、カジノに手を出すのだが…配管工事をしているクライド(フォレスト・ウィッテカー)は、膨らんだ多額の借金に悩んでいた。
裏組織に脅迫され、借金の肩代わりにバスケの試合で、弟のゴッドフリー(ニック・キャノン)に八百長をさせていた。ある試合の日、クライドはプロバスケット選手を目指している弟の為に、ある決断をする。ノミ屋のウィンが殺され、ブルンナー刑事がヴィクター(ティム・ロス)の元に訪ねてくる。
裏社会で帝王と呼ばれている謎の男、アイヴァンが捜査上にあがっていた。アイヴァンの指示で、儲け過ぎたウィングをヴィクターが消したというが…。目の前のセカンド・チャンスを狙った者たちと一つの殺人事件が、想像を絶する結末へ交錯していく──
■感想
小説家のキャロリンは、ギャンブル依存症により家の貯金を使い込んでしまう。そして、夫にそのことがバレ、離婚されることに…。キャロリンの考え方は、まさにギャンブル依存症そのものだ。負けを取り戻すのは常にギャンブル。
売れない手品師のウォルターと協力して、詐欺まがいなことをして小銭を稼ぐが、大きなギャンブルに挑戦することになる。ウォルターがバスケの八百長試合を知り、そこに有り金を全てつぎこむのだが…。観衆はその結末を予想できるだけに、憐れみしかわいてこない。
マフィアに脅される配管工のクライドは、大学バスケのスターである弟に八百長をもちかける。最初はうまくいくのだが…。クライドが弟に迷惑をかけることに嫌気が差し、最後の大勝負で自分の信念を貫く行為にでる。
その結果がどのような結末を招くのか、想像できていたとしても、クライドは信念を曲げることはないのだろう。このクライドのプライドが、その他の者たちの運命も大きく変えることになる。アイヴァンという裏社会の帝王についてキーワードのみ独り歩きし、実態が見えないことがより不気味さを増大させている。
ラストの流れは、なんだか哀愁漂う流れだ。八百長試合に大金を賭けた者たち。そして、マフィアから報復を受ける者。ラストチャンスと思いすべてをつぎ込んだ者たちの絶望はすさまじい。そして、その絶望は激しい怒りへと変わっていくことになる。
小説家のキャロリンはすべてが終わった後に、小説家として大成する。家族の崩壊と引き換えの成功なのだろう。作中に登場する者たちが誰ひとりとして幸せになっていないのが、このなんとも言えない後味の悪さを誘発しているのだろう。
ラストシーンは、悲しみばかりが印象に残っている。
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