ザ・ファイター


 2016.1.18      実在する兄弟という衝撃 【ザ・ファイター】

                     


■ヒトコト感想

実在した人物をテーマとした作品。元プロボクサーの兄ディッキー。弟は将来有望なボクサーであるミッキー。弟の華々しい道の障害となるのは、薬物中毒になりかかったディッキーと、過保護な母親のアリスだ。本作が実在の人物を元に描かれたことに衝撃を受けた。薬物でボロボロになり、げっそりと痩せ細ったディッキー。その表情は狂気に満ちているが、その陽気な雰囲気から深刻な感じはない。

母親のアリスは常にミッキーに干渉し、自分の影響力を示したがる。こんな厄介な状況から、将来有望なはずのミッキーが次第に落ちぶれていく。兄と母親から決別することにより、世界チャンピオンへのチャンスを得るのだが…。決別の過程に強烈なインパクトがある。家族のやっかいさがよくわかる作品だ。

■ストーリー

異父兄弟のディッキーとミッキーは、共にプロボクサー。兄のディッキーは地域の期待を一身に背負う名ボクサーだが、その短気で怠惰な性格から破綻した毎日を送っている。一方、弟のミッキーは才能に恵まれず、世界チャンピオンなど夢のまた夢。過保護な母親アリス、そして兄のディッキーに言われるがままに試合を重ねるが、一度も勝利を収めることが出来ず、次第に家族の絆もボロボロになっていく。そんな中、薬物中毒となった兄ディッキーが、監獄送りに。

人生のどん底まで落ちた兄を見て、ミッキーは彼と縁を切る決断をする。ミッキーを支え続けるガールフレンドのシャーリーンと共に再起をかけてトレーニングを重ねるが、そんなミッキーに、ディッキーは監獄の中からもアドバイスを送り続ける。どんなに弟に否定されても、弟を応援し続ける兄。そして、兄の出所の日、ミッキーはディッキーをふたたびコーチに向かえ、二人三脚で再度世界の頂点を目指し始める――。

■感想
兄のディッキーは元有名ボクサー。華々しい世界から薬物に依存し、落ちぶれた人生を送っている。ディッキーは、歯が抜けてはいるが常に陽気で他者を愉快な気持ちにさせる。過去の栄光にすがりつつ、弟のミッキーの成長を喜ぶ。

かと思うと、母親のアリスを恐れ、薬のたまり場に母親がくると、窓から飛びおりて逃げ出す。あげくの果てにはミッキーの大事な試合に遅れたりもする。とことんダメなディッキーだが、なぜか憎めない表情をしている。ただ、ミッキーの成長の妨げになっていることは間違いない。

ミッキーが兄と母親の呪縛から逃れるため、恋人のシャーリーンと共に決別を宣言する。兄と母親からしたら、知らない女にミッキーがたぶらかされているとみるだろう。アリスの強引さは強烈だ。こんな母親がいたら、誰もが委縮してしまうかもしれない。

誰もがミッキーのためを思って行動しているが、それが結果に結びつかない。ディッキーが暴れたせいで助けに入ったミッキーのこぶしがつぶされるシーンで、ミッキーのボクサー人生は終わったかに思われた。身内であるだけに、そう簡単には切れない絆がある。

ディッキーとアリス二人と和解したミッキー。ラストは家族と共に協力し世界チャンピオンを目指す。この流れは確かにすばらしい。試合展開にしても、まるでドラマチックな映画のように大逆転勝利を手に入れるミッキー。これがすべて実話を元にしたということに驚いた。

エンドロールで実際に二人が登場するのだが、驚くほど映画内の人物たちと雰囲気が酷似している。改めて俳優たちの強烈な演技力と本人になりきる力のすごさを思い知らされた。日本では無名に近いボクサーだが、絵に書いたようなサクセスストーリーを歩いてきたボクサーだということがわかる。

これがフィクションだったら大したことはない。実話ということが衝撃的だ。



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