ザ・ドア 交差する世界


 2017.12.21      究極に自己中な世界 【ザ・ドア 交差する世界】

                     
ザ・ドア 交差する世界 [ マッツ・ミケルセン ]
評価:3

■ヒトコト感想
画家のダビッドが主人公の本作。ご近所さんと不倫の真っ最中に娘が事故死してしまう。後悔にさいなまれるダビッド。5年後、不思議な扉を見つけ、中に入ると…。5年前の世界にタイムスリップしてしまう。それはつまり、娘が事故死する前の世界。過去をやり直そうとするダビッドだが、そこには過去の自分がいる。

物語のポイントとしては、ダビッドの周辺では、実はダビッドと同じように未来からやってきた人が多数いるということと、みなそれを隠しているということだ。未来から過去に戻った場合は、過去の自分を殺す必要がある。過去の自分を殺したが今の自分がどうなるか、というタイムパラドックスは無視されている。未来の人々が結託して今の生活を守ろうとするあたりが特殊だ。

■ストーリー
不倫中に娘を事故で亡くし、妻に愛想を尽かされすべてを失った画家・ダビッド。自暴自棄になり自殺を試みた彼は不思議な扉を発見する。それは何と娘を事故で亡くしたあの日に繋がっていた。

■感想
過去の過ちにより娘を死なせてしまった男ダビッド。謎の扉をくぐると、そこは5年前の世界だった。娘の事故を防いだはいいが、過去の自分を突発的に殺してしまう。未来の自分が5年前の自分を殺す。タイムパラドックスを無視した世界なので、未来の自分に影響はない。

ダビッドはそのまま過去の世界に居座ることにし、過ちを繰り返さないように注意する。5年歳をとった自分が入れ替わっても周りはほとんど気づくことがない。唯一、娘だけがその違和感に気づいてしまう。

本作のポイントは、町にはダビッドと同じように未来からやってきた者が多数存在するということだ。それらの人々は、過ちを繰り返さないために未来からやってくる。そして、概ね幸せな生活を続けている。未来を知ることで、競馬で大儲けした者もいる。

町全体が未来の人間たちに支配されているような気配すらある。それらの人々の中で、ダビッドだけが違和感をおぼえ、未来から来た殺人者を排除しようとする。自分の妻さえも、未来からやってくる。過去の妻が殺されるのを指をくわえて見ているのか…。

ダビッドだけが変な正義感をふりかざしている。5年後の未来からやってきたダビッドだが、その世界にも謎の扉は存在する。そこでもしダビッドがまたさらに5年後に戻ったとしたら。10歳老けたダビッドが過去に戻ることになるのだろうか。

未来の自分が、自分を殺しにくる世界も恐ろしい。この世界にいる者たちは、みな自分のことしか考えていない。自分が幸せになるためには、過去の幸せな自分自身すらも殺そうとする。まさに究極に自己中な世界だ。

心変わりしたダビッドの気持ちは、わからなくはない。



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